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舞台『ブレイキング・ザ・コード』稽古場レポート~言葉の裏側にある重要な部分を満たしていく(亀田佳明)

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『ブレイキング・ザ・コード』稽古場より



イギリスの数学者でコンピューターを発明した実在の人物、アラン・チューリングの生涯を描いた舞台『ブレイキング・ザ・コード』が、2023年4月1日(土)〜4月23日(日) 東京・シアタートラムにて上演される。

第二次世界大戦中、ナチスの暗号「エニグマ」を解読して多くの命を救いながらもその功績は長年隠され続け、また当時のイギリスでは同性愛が犯罪とされていたため、同性愛者という秘密を抱えながら生きていたチューリング。近年、映画『イミテーション・ゲーム』でベネディクト・カンバーバッチがチューリングを演じたことでも話題となった。

主演アラン・チューリングに亀田佳明、チューリングと関係を持つロン・ミラー役に水田航生、チューリングの同僚パット役に岡本玲、チューリングを戦時中の暗号解読に引き抜いたノックス役に加藤敬二、チューリングの初恋相手、少年クリストファー役に田中亨、上層階級の官僚ジョン・スミス役に中村まこと、チューリングの母、サラ・チューリング役に保坂知寿、刑事ミック・ロス役に堀部圭亮と、豊かなキャストが揃い、演出は注目の若手演出家・稲葉賀恵が務める。

日本での上演は33年ぶりとなる本作への期待が高まる中、本番に向け準備の進む稽古場を取材した。

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『ブレイキング・ザ・コード』稽古場より


この日の稽古は、チューリング(亀田)の家をロン(水田)が訪ねて来るシーンから始まった。まず、稲葉が2人にシーンの意図を時間をかけてじっくりと語り、その後3人でのディスカッションという形で、それぞれのキャラクターの心理を深く掘り下げ分析していく。実在する人物たちの物語であるため、「史実ではこうなっている」という言葉がたびたび出てきた。今作は実在の人物や実際の出来事をベースにしているが、チューリングの伝記を基に執筆された“戯曲”であるため、史実を尊重しながら、演劇作品として丁寧に想像の翼を広げていく3人の姿が印象的だった。

時間をかけたディスカッションの後、2人が実際に動いて演じる稽古へと移った。このシーンは、出会って間もないチューリングの家をロンが初めて訪れるという、どこかぎこちなくお互いを探り合うようなやり取りが続く。チューリングがロンのために用意した料理を食べ、話しをするうちに互いの距離が近くなっていくというプロセスを踏むのだが、その経過を稲葉は細やかに演出していく。

『ブレイキング・ザ・コード』稽古場より


稲葉は具体的な例を出しながら役の心情を紐解いていき、台本には描かれていない部分についても細かく分析していく。これまで見てきた稲葉の演出舞台において、登場人物の表現に深みを感じられた理由がここにあるのだと納得がいった。役者は台本上のセリフに現れている表面的なところだけでなく、重層的な内面の心理まで稲葉とじっくり話し合ったうえで役を作っているのだ。

水田が「ここがおかしいな、と思って」と違和感や疑問を挙げると、稲葉もそれに「なるほど、そうだよね、じゃあこうしようか」と応え、俳優に寄り添いながら細かな変更を加えていく場面もあった。その役を演じる俳優が実際に動き、セリフを発してみないと見えないことも多い中、稲葉はそれぞれのキャストの言葉によく耳を傾け、どうするのがよいかを吟味しながら作品を熟成させていく演出家だということが、今回の稽古場見学で伝わってきた。

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