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映画制作を志す人が安心して働けるための取り組み、映連&日映協&映職連が合意「日本映画界の新しい一歩」

MOVIE WALKER PRESS

映画制作を志す人たちが安心して働ける環境を作るために、映画界が自主的に設立した第三者機関「日本映画制作適正化機構」(映適)が発足。日本映画製作者連盟(映連)、日本映画製作者協会(日映協)、日本映像職能連合(映職連)との間で「日本映画制作適正化認定制度に関する協約」が合意され、3月29日に東京都内で調印式と記者会見が行われた。一般社団法人日本映画製作者連盟の代表理事、島谷能成は「日本映画界の新しい一歩」だと語った。

これまで映画制作の現場では、確固たるルールがないまま作品がつくられてきた。経済産業省が2019年に実態調査を実施したところ、フリーランスのスタッフが7割以上を占めている映画制作の現場では、就業条件や安全管理、人材育成等が脆弱化しているという問題点が浮き彫りになった。また長時間労働などの厳しい労働環境、契約書・発注書等が交付されないまま取引がなされるなど、改善すべき課題が多数あることまでが明らかになっている。

それを受け、検討会の立ちあげや、調査・実証事業を経て、2022年6月に「一般社団法人日本映画制作適正化機構」が設立。2023年3月29日、映連、日映協、映職連が参加して「日本映画制作適正化認定制度に関する協約」の締結に至った。「映像制作の持続的な発展に向けた取引ガイドライン」として、既存の各種法令において適法であることを前提に映画製作者、制作会社(プロダクション)及びフリーランスによってあらかじめ明示的に合意した条件を定め、過剰・過密な就業状況を避け、安全・安心して映画制作に集中できる状態を目指す。

「映適」は、協約・ガイドラインに基づき運用され、審査機能とスタッフセンター機能により構成される。4月1日からは、作品ごとに基準に適合しているかどうか審査を実施し、認定する「作品認定制度」がスタートする。撮影時間や休憩時間のルール、安全やハラスメントに関する体制整備が行われている作品に対して審査をし、ガイドラインに基づいて制作された作品には、「映適」が運営する「日本映画制作適正化認定制度」によって適正な制作が行われた認定の印である「映適マーク」が与えられる。実写映画が対象となる。

映画制作現場の未来については、近年さまざまな議論が繰り広げられている。検討会では、映画産業における日本国内市場は頭打ちとなり、製作費が低迷。その結果として就業環境が悪化し現場も疲弊、コンテンツの質も低下していくという悪循環が起きているのが、現状だという話し合いが行われたという。映画制作を将来にわたって持続させるためには、健全な現場として若い人が集まってくるような産業となるべく転換をはかり、コンテンツの質の向上へとつなげることが必須となる。「映適」の審査員を務める阿部勉は、「ガイドラインに沿ってきちんと制作が行われるようサポート、情報提供する役割を担っていく。ガイドラインを作るだけではなく、それを実現するための組織」とコメント。「クリエイティブな現場にルールはそぐわない」という固定概念を乗り越え、「誰もが夢を持って働ける産業として、発展していくことを目指す」と力を込めた。

一般社団法人日本映画製作者連盟の代表理事、島谷は「映画界にとって新しい一歩を踏みだせる」と切りだし、2019年からこれまでの歩みを述懐。「最初はこれは大変だなと、無理筋じゃないかと思った。単純に『映画制作現場の労働条件を改善していこう』というだけの話ではない。出資して制作を発注する人、それを受けるプロダクション、フリーランスのスタッフ集団の皆さん。この3者が集まって合意をしなければいけない。大変難しい話だなと思ったのは事実」だと率直に明かし、「よくぞここまで来たというのが実感。感無量です。ただこれからがスタートです。映倫のような形で、自立した『映適』が生まれていくよう全力をあげてやっていきたい」と意気込んだ。

日本映画製作者協会の代表理事、新藤次郎も「若手が入ってこないことが問題。以前は『ハードな現場でも、好きでやっているんだから、しょうがない』という話がほとんどだった。もうそういう時代ではない」と変革が必要だと話し、「資金側、プロダクション、フリースタッフが『制作環境をよくしようよ』と一つのテーブルを囲むことができた。それはものすごく大きなこと。初めてのことだった。そのテーブルが今後も担保されたというのは、革命に近いこと」と今後も話し合う場所があることが、とても心強いという。「制作環境を変えれば、必ず日本映画が強くなるはず。クリエイターが育てば、強い映画ができる」と期待を込めた。

日本映画撮影監督協会の代表理事、浜田毅は「やっと協定が結ばれた。うれしく思います。職能団体に入っていない人たちも巻き込んだ、すばらしい組織にしていきたい」と強調。「映適マーク」が与えるインパクトについて、島谷は「法令の遵守なくしては、我々の業界は持続も発展もできない。必要な一手だった。難しい一歩をようやく踏みだすことができた。まずは日本映画の実写の世界で、『映適』のルールがどれだけ浸透していくかが勝負」と未来を見つめていた。

取材・文/成田おり枝
 
   

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