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「ソラミミストは引退しました」 タモリ倶楽部終了…安斎肇さんに聞いた「空耳アワー」の30年

J-CASTニュース

――投稿者は「余計なこと書かなきゃと良かった」と思っているでしょうね。

安斎:ただ、これはそれなりに致し方ないことなのかもしれません。というのも、空耳作品って、結局は「映像のマジック」なんですよ。つまり、投稿段階では、その作品がどういう作品になるか、それこそ、爆発的な面白さを生み出す作品になるかどうかは投稿者には分からないんです。なので、「こんな作品、送っていいのかな?」という遠慮の思いで「手ぬぐい希望」と書いていた可能性は否定できません。そう考えると、やはり、作品におけるスタッフさんの活躍は実に大きいんですよ。

「空耳文化」は永久に不滅!?

――空耳作品って、本当に有名な楽曲であっても、「こう聞こえたんだ!」として投稿してくる方がいらっしゃいました。そして、実際、そのように聞こえる場合は決して少なくはありませんでしたね。そう考えると、空耳とはネタが尽きることがない文化なのでしょうか?

安斎:空耳って現象ですからね。言葉が存在する限り存在し続けると言うことが出来ると思いますよ。空耳とは「映像のマジック」ですから。それまでは聞こえなかったフレーズが本当にそのように聞こえるように錯覚してしまうため、新しく焼き直すことは永遠に可能なんだと信じてます。

――なるほど!

安斎:実際、「ザ・ビートルズ」の楽曲である「I Want To Hold Your Hand」の一節で、タイトルの通り「I Want To Hold Your Hand」というくだりがありますが、空耳アワーではそこに「アホな放尿犯」というテロップを出しつつ、あたりに小便をまき散らす人が描かれていました。あれは本来聞こえないですよね。VTRがあって初めて、「アホな放尿犯」が成立するんですよ。

――空耳アワーのコーナーは1992年から始まりましたが、安斎さんはそれ以前に、「外国語の歌詞が、あたかも日本語であるかのように聞こえてしまう現象」という意味での空耳は楽しんでいらっしゃったんでしょうか?

安斎:楽しんでいたわけないじゃないですか(笑)! 確かに、空耳アワーが始まる前から、ラジオ番組で「外国語の歌詞が、あたかも日本語であるかのように聞こえてしまう現象」が取り上げられることはよくありましたが、空耳アワーは、やはり、「映像をつけた」という所が画期的だったんです。人間、やっぱり、「絵の力」に引っ張られるんですよ。僕、本業はイラストレーターだから、やっぱり、絵が持つ「魔力」のすごさには気付いてしまいますね。

ネイティブ話者からツッコミが寄せられたことも

――今、本業のイラストレーターのお話が出ましたが、プリンスの「バットダンス」の歌詞が「農協牛乳」(歌詞としては「Don’t stop dancin’」)に聞こえるという作品が放送された際、安斎さんは農協牛乳のパックのデザインに関わったことがあるとお話しされていましたね。

安斎:そうなんですよ。当時、僕が勤務していたデザイン事務所が受注したんです。僕が担当したのは「農協牛乳」という文字の角を整えたりして、フォントに丸みを帯びさせて見た目を綺麗にするといったアシスタントの作業を毎日毎日していました。だから、プリンスの「農協牛乳」に対してはものすごい思い入れがありますし、VTRを何度見ても笑ってしまいますね(笑)。

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――空耳作品は英語以外の楽曲のものもたくさんありますが、この言語は空耳が多発しやすい、もしくは、このアーティストはたくさん発生する、といった傾向はありますか?

安斎:番組でタモリさんが、「メタルは空耳が生まれやすい」とおっしゃったことがありました。なので、タモリさんの言葉を受けて視聴者の皆さんが盛んに探したんでしょうけど、一時期、メタルの作品がすごく多かった時期があります。やはり、人間、絶叫すると、発音がうかつなことになっちゃうんですよ。先程話した「農協牛乳」も絶叫していますが、とてもではないですが、「Don’t stop dancin’」とは聞こえませんし、英語のネイティブの方から「そうは言ってないんじゃないか」という意見が出たこともありました。

「自分としては、『ソラミミスト』は引退しました」

インタビュー終盤、安斎さんはタモリさんへの思いを語り始めた。

――1992年に始まった空耳アワーの長い歴史の中で、遅刻によって安斎さんがコーナーに途中から参加するという出来事が何度かありましたが、時間に遅れるとタモリさんはどんな態度になるのでしょうか。

安斎:小さな遅刻は数知れなかったので、スタッフはもちろんタモリさんも慣れてしまったため、少々の遅れでは大きなリアクションをなさることはなくなりました。ただ、2時間近く遅れてしまった際には、さすがに、「ちょっと、そこへ座りなさい」という展開になったことはあります。

――安斎さんが登場しない放送回もありましたよね。

安斎:実際、同規模の遅刻をして、結局は収録に行けなかったこともありましたからね。本当に申し訳ないことを何度もしてしまいました。なお、僕が行けなかった放送回では渡辺祐さんやマーティ・フリードマンさんといった代役の方が代わりに進行してくださいました。お2人を含め、代役を務めてくださった方々には、ただただ感謝です。

――今後、空耳アワーが特番として放送される可能性はあるでしょうか? 放送を望む声は非常に多いですが、いかがでしょう?

安斎:そう言っていただけるのは、めちゃくちゃうれしいです。惜しまれながらの最終回を空耳アワーは迎えられたわけですからね。実際、私の周りでも、「何とか続けてほしい」と言ってくださる方は相当数いらっしゃいます。ただ、実際に特番うんぬんの話は出ていませんし、空耳アワーはあくまでタモリさんあってのコーナーですから、「タモリ俱楽部」という本体がなくなってしまう以上、空耳アワーだけ残るというのは筋の通らない話なのかなと思います。なので、自分としては、「ソラミミスト」は引退しました。

――今後、空耳アワーの収録はなくなるわけですが、タモリさんに会う機会は今後もあるんでしょうか。

安斎:ないんじゃないですかね。それが一番さびしいです。収録がなくなると「会う口実」がなくなるわけですから、それは本当にさびしいです。それは同時に、スタッフさんと会う機会もなくなるということですから、こちらもさびしいです。ただ、音楽と映像を組み合わせた遊びという手法自体がなくなることはないと思うので、今後はそれを一視聴者として楽しんでいければなと思っています。

安斎肇さん プロフィール

あんざい・はじめ 1953年12月21日生まれ。東京都出身。桑沢デザイン研究所デザイン科修了後、麹谷・入江デザイン室とSMSレコードデザイン室を経てフリーのイラストレーターに。1992年、「タモリ俱楽部」(テレビ朝日系)のコーナー「空耳アワー」への出演を始め、2023年3月24日のコーナーの最終回で「ソラミミスト」を引退した。

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