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『舞いあがれ!』朝ドラでは難役の“兄”を見事に演じた横山裕 悠人の人生を愛情が包む

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『舞いあがれ!』写真提供=NHK

 ついに最終週を迎えたNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』。3月28日放送の第123話では、悠人(横山裕)と久留美(山下美月)が舞(福原遥)たちにある報告をする。舞たちと対面する形で隣り合っている悠人と久留美の姿は結婚報告を思わせ、ちょっとワクワクする気持ちになるとともに、特に悠人に、本当に信頼できるパートナーができたことに嬉しくなる。

参考:『舞いあがれ!』桑原亮子が最も書きやすかったキャラは? 横山裕が作り上げた悠人の魅力

 悠人は岩倉家に波乱を呼ぶ存在だった。幼い頃からそつなくいろんなことをこなすことができ、努力も惜しまなかった悠人は、小さい町工場を営む、決して裕福とは言えない家庭から東大に進学した。きっと長きにわたっていい成績を残さねばというプレッシャーがあっただろうし、周りから変に「神童」扱いされてしまい、立ち振る舞いに悩んだ時もあったかもしれない。そこには悠人にしかわからない苦労があったことだろう。

 気がつくと悠人は、他人だけでなく親である浩太(高橋克典)やめぐみ(永作博美)にも心を閉ざし、距離を取るようになってしまっていた。家族でさえ、悠人の思いや考えていることがわからない。だからこそ、過度に神経質になっている悠人に影響されてめぐみや幼い舞は不安定になってしまったし、浩太は悠人が成長してから言い争うことが増え、最後には喧嘩状態のまま永遠の別れを迎えることになってしまった。

 家族関係があまりうまくいっていなくても、投資家として成功していたことが悠人の支えになっていたはずだ。だが、それもインサイダー取引が明るみに出たことで崩れ去ってしまう。何もかもなくなってしまった悠人がふらふらとやってきたのは、故郷の東大阪。やはり最後の最後に頼れるのは家族だと、どこかで考えていたのだろう。弱り切っていた心に「支えてくれる家族がいてはるんやから、頼ったらええやないですか」という久留美の言葉が決め手となり、悠人はかつては疎遠だった家族とともに次第に立ち直っていった。未だに表情はクールでわかりにくく、言葉数も少ないが、今では周りに不器用な優しさを見せているように感じる。

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 そもそもインサイダー取引に手を出してしまったのは、「損失を出してしまった分をなんとか取り返そう」と躍起になったからだった。ここから、悠人が自分の利益だけを考えていたのではなく、顧客の利益を優先し、有名投資家としての期待に応えようとしていたことが窺える。悠人は本来、舞と同じく、心優しい性格の持ち主なのだ。さまざまなことを経験した悠人は、やっと今、何も取り繕うことなく人と接することができているのかもしれない。

 朝ドラにおいて、“兄”という役は難しい。特に近年は、長い間定職につかず、家族を振り回していた『ちむどんどん』の長男・賢秀(竜星涼)や和菓子屋の跡取りのはずが、自分の夢を追いかけ多額の借金を抱えてしまった『カムカムエヴリバディ』の算太(濱田岳)など、ヒロインと比べると明らかに「ダメ兄」というキャラクターが続いていた。悠人演じる横山裕は、普段のクールな表情がミステリアスさを醸し出し、その佇まいはどこかやさぐれたような様子も感じさせる。そのため、悠人が舞を振り回す「ダメ兄」となるのか、支えとなる「良き兄」となるのかが、一見しただけでは予測できず、放送前は大きな話題となっていた。

 結果として悠人は「ダメ兄」だったかもしれないが、たくさんの失敗から学び、やり直し、だんだんと舞と公私ともに協力し合える「良き兄」となっていったと言えるのではないだろうか。それにあわせて、はじめはどこか不穏な雰囲気をまとった演技をしていた横山も、柔らかな笑顔を見せることが増えている。やや捻くれたところもありながら、深い愛情も感じさせる。横山はそんな一筋縄ではいかない悠人のキャラクターをしっかりと演じて見せた。

 『舞いあがれ!』は舞の人生を描いた物語であるが、その隣には悠人の人生もある。実は、なかなかに波乱万丈な悠人の物語。最後は晴れやかな笑顔で締めくくられることを願っている。(久保田ひかる)

 
   

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