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山下美月、『舞いあがれ!』で証明した技量の高さ 西野七瀬を思わせる演技力と俳優の道

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『舞いあがれ!』写真提供=NHK

 舞(福原遥)が空へと羽ばたく夢を追いかける『舞いあがれ!』(NHK総合)が3月27日の放送より最終週を迎えた。中でも舞の幼なじみとして、舞に寄り添い共に手を取り合いながら歩んできたのが久留美(山下美月)だ。現役の乃木坂46として朝ドラに出演するのは山下美月が最初であり、大きな快挙だった。幅広い世代に愛されている朝ドラでどのような印象を残すのかというところも気になっていたが、ここまで観てきた上で語れるのは乃木坂46、いやこの世代を代表する俳優としての一歩となったということだ。福原遥のヒロイン像に負けず劣らずの愛くるしさで、お茶の間へと山下の演技が浸透していったのではないか。

参考:『舞いあがれ!』第124話、舞(福原遥)たちが新型コロナウイルスの影響を大きく受ける

 舞が空を飛ぶことを夢見る一方で、家庭環境から堅実な道を進んできた久留美。高校卒業後には看護学校に進学し、成績優秀で授業料免除の特待生として選ばれるなど、いわゆる真面目な学生だった。2007年からは花園総合医療センターで救命救急の看護師として勤務していたが、フライトナースという新たな夢を見つけ、2016年からは五島列島からほど近い長崎総合医療病院に転職することになる。

 第108話で「看護師としてのキャリアを考えたときに、道はいろいろあるねんけど、救命救急の看護を極めたい。ドクターヘリに乗れたら、最前線でもっと経験積めるから」と久留美は初めて大きな決断をした。これまで怪我で失職し自堕落な生活を送っていた父親を気遣い、自分の思いを胸の内に閉じ込めていた久留美が初めて一歩を踏み出した瞬間だ。長崎への転勤は、個人的には山下の出演回数が少なくなるであろうと思えて残念な部分もあったが、それ以上に久留美の決断を心から応援したくなった。

 本作で山下は、強い芯をもったたくましい女性像を演じた。久留美は両親が離婚し、さらには父親がだらしない生活をしているという環境もあり、父親を支えたいという母性溢れる人物としても描かれる。これまで『電影少女 -VIDEO GIRL MAI 2019-』(テレビ東京系)では男性を翻弄する神尾マイや、『じゃない方の彼女』(テレビ東京系)では大学生という等身大ながら大学教授に近づいていく野々山怜子という。どこか癖があって、明確な特徴がある役柄を演じることが多かった。こうしたイメージは山下の“あざとい”キャラへと繋がってゆくが、男性を魅了する小悪魔的な仕草や目の使い方など役者としての細かな演出には驚かされた。

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 ときには“あざとい”キャラという固定されたイメージがつくことは演じる側にとってネガティブな受け取り方をされることも少なくないが、山下は「今までやってきたことの積み重ねで今回も怜子役をやらせていただけることになったと思うので、そういう繋がりの大事さはものすごく実感しています」と自身のイメージへの感謝を語っていた。(※1)

 だが、『舞いあがれ!』では舞の幼なじみであり、看護師という一般的な役に過ぎない。それは山下のこれまでの積み重ねてきたイメージとは程遠いもの。だからこそ、久留美という役柄は山下にとって正念場であるとともに、これを乗り越えられたのならば、それは大きな意味を持っているものだ。そもそも強烈な個性を持った役柄を演じることよりも、視聴者が共感できる素朴な役柄を演じるほうがより難しい。強烈な役というのはそれだけでキャラが成立してしまうが、そうでない場合には特に役者本人の技量が試される場合が多いからだ。

 山下はそんな高いハードルを乗り越えて、久留美という“一般人”に寄り添った役で視聴者の多くの共感を呼んだ。公式サイトのインタビューでこう語っている。

「最初に監督から『舞ちゃんとは逆のタイプの女の子にしたい』と聞いたので、声も低くして話すテンポを速くして、ちゃきちゃき感みたいなものを意識しています」(※2)

 女性らしい強さを持ち合わせながらどこかのんびりとした印象のある舞に対して、久留美は現実的で関西人らしく言いたいことはキッパリと言う性格。その対照的なキャラクターが映し出すのは親近感。舞が大きな夢を掲げていろんなことに挑戦していく中で、久留美は堅実に看護師の道を歩む姿を見せているからこそ、朝ドラとして絶妙なバランス感を生んでいたのだと思う。

 そしてそのバランス感に欠かせないのが堅忍質直な佇まいと関西人のような親しみやすさだ。映画『日日是好日』や『着飾る恋には理由があって』(TBS系)でも感じたことだが、山下は何気ないシーンでの表情や仕草といった細かい部分の表現が本当に上手い。この点において、山下は元乃木坂46の西野七瀬に近いものがある。もちろん、山下のパブリックイメージにあった役もいい。だが、俳優としての真骨頂は等身大の役柄でこそ発揮されるといえる。

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