
今まさに“火の車”。生産抑制や、辞めてしまう養鶏場も
「さらには、追い打ちをかけるように水道光熱費、資材費、運賃、人件費なども全て高騰しました。もともと鶏卵の生産は利幅が少なく、『今後も維持することは難しい』という理由から辞めてしまう養鶏場や、『市場の相場が上がるまで生産を抑制する』という養鶏場が多いです。そのため、価格高騰や供給量不足が鳥インフルエンザの流行によって深刻化する事態になっています」
これまで供給側が何とか対処してくれていた問題が、物価上昇や鳥インフルエンザなどの影響によって一気に顕在化してしまったようだ。
卵だけでなく鶏肉も高騰。外食産業への影響は?

続けて、「目玉焼きや玉子焼き、パンケーキなど、卵を活用したメニューを休売している外食チェーン店さんは増えています。また、カステラやバウムクーヘン、シュークリーム、プリンなどのスイーツを製造しているお菓子メーカーさんでも卵の供給制限に紐づいて、数量制限や休売の動きが少なくありません。スーパーマーケットさんでも、プリンコーナーでは卵を使用していないプリンの陳列が目立ってきたように感じます」と鶏卵の価格上昇を受けて、様々な食料品にも派生していると話した。
鳥インフルエンザが落ち着いても、卵の価格は戻らない?

さらには、「鳥インフルエンザが発生した養鶏場が、完全に復活するまでに最低でも1年~1年半かかることが見込まれています。供給量が元通りになるのは、早くても来年の春以降ではないでしょうか。目に見えないウイルスとの闘いですので、本当に深刻な状況です」と答える。
「卵の存在価値や意義を考えるきっかけに」
「鳥インフルエンザの発生は、若干ではありますが落ち着いてきました。回復傾向ではありますが、10月末からはまた鳥インフルエンザの流行時期に差しかかってきてしまいます。
もし今回と同じような規模で発生してしまえばさらに状況が悪化しますし、なんとも断言ができません」と油断しない姿勢を見せる。
「最大限の対策を私たち生産者も取ってはいきますが、見えないウイルスとの闘いでは、『大丈夫』という発言はできません。今回の価格高騰や供給の面で、鶏卵にスポットライトが当たりやすくなっていますので、改めて卵の存在価値や意義を考え直すきっかけになれば嬉しいです」
養鶏場で働く人たちの頑張りによって家計が支えられてきたことがよくわかった。今後も卵や鶏肉を美味しくいただくために、養鶏場の運営については高い関心を持ちたい。
参考:鳥インフルエンザに関する情報(農林水産省)
<取材・文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki