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コオロギ食うよりこっちのほうがいいんじゃね?インドネシア製淡水魚養殖シム『Aquaculture Land: Fish Farming Simulation』から見る食料問題

Game*Spark

2022年12月、インドネシア・スラバヤに拠点を置くMaulidan Gamesが開発した『Aquaculture Land: Fish Farming Simulation』(以下『Aquaculture Land』)が早期アクセスを卒業して正式リリースされました。

この作品は世にも珍しい淡水魚養殖シム。堀の中で食用魚を育て、それを売却して収益を得るのが目的です。農業シムや漁業シムや街づくりシムというものは存在しますが、淡水魚の養殖ビジネスをテーマにしたシムというものは筆者の経験の中ではこれが初めてでした。

しかし一方で、これほどインドネシアらしいゲームも他にないのではとも思います。

インドネシアの「3T問題」を解決する切り札・淡水魚養殖
インドネシアは淡水魚養殖が盛んな国でもあります。

痩せた土地や休耕地に堀を設け、そこで食用魚を育てることにより農家は安定した収入を得ることができます。年間のアベレージが高い収入源は、農村部から都市部への人口流出を抑える効果も生み出します。

インドネシアには「3T問題」というものが存在します。「Terdepan(辺境)」「Terluar(外側)」「Tertinggal(取り残され)」という意味で、日本で言うところの「限界集落問題」です。そのような地域の若者は、より大きな稼ぎを求めてジャカルタやスラバヤ、或いは世界最大の観光地域バリ島、大規模工業団地のあるバタム島、そうでなければレアメタルの鉱山のあるパプアへ行ってしまいます(首都移転問題やニッケル鉱石輸出規制問題も、そのような背景が絡んでいます)。

しかし、地元に何かしらの産業があれば、わざわざ仕事のために他の都市へ行く必要はなくなります。

そしてインドネシアの中央政府が目指すのは「各地域平等の発展」です。バリ島、バタム島の例外を除いて、インドネシアの産業はジャワ島に一極集中しています。それを少しでも分散させるには、「おらが村でできる商売」を確立しなければなりません。

そのような意味で、淡水魚養殖は今のところ最も手軽かつ確実な「農家の副業」なのです。

養殖事業をリアルに再現!
さて、『Aquaculture Land』をプレイしてみましょう。

最初のうちは、インドネシアでは最もポピュラーな食用淡水魚「ティラピア」を育てます。堀の中の魚はレベル1からレベル4まで上げることができ、従業員も設定でオートメーション化できます。

ただし、ただ単に魚を堀に入れたらいいというわけではありません。水の中に酸素を供給する機器や水を浄化する機器などを設置し、さらにそれらを動かす発電機も用意します。しかも魚の種類によって「汚水に強い・弱い」「密集に強い・弱い」等があります。たとえば、あまり狭い堀に数を入れ過ぎると魚がストレスを感じてしまい、健康を害してしまうことも。

そしてレベル4になった魚は、成長具合を見て寿命ギリギリのところで引き上げるようにします。時間をかければかけるほど魚は大きくなっていくのですが、あまり欲張ると魚が寿命を迎えて死んでしまいます。

ティラピアは一番最初に実装されている魚のため、敢えて悪い表現を使えばかなりの悪食です。水の汚染、酸素の欠乏、騒音、密集、そして寄生虫にも強く、少ない維持管理費用でグングン育ちます。

収穫した魚は、それを求める村人のところまで持っていって現金化します。しかし村人のクエストをこなして親密度を上げていくと、彼らを介さずに自分の手で魚をパサール(市場)へ持っていくこともできるように。

いや、このゲームは確かに面白い! 現状、『Aquaculture Land』に日本語翻訳はなく、筆者にとっては英語より得意なインドネシア語表示でプレイしました。きっと今までインドネシア語を勉強してきたのは、このゲームをやるためだったんだ!

急成長するアグリテックサービス「eFishery」とは
先ほど「淡水魚養殖は今のところ最も手軽かつ確実な副業」と述べましたが、『Aquaculture Land』をプレイするとそんなことも言ってられなくなります。

従業員は自動で動かせるとはいえ、やることが多い! 堀の設置から水入れ、稚魚の投入、餌やり、魚の具合の観察(種類によって供給酸素量も違います)、そして機器のメンテナンスと燃料補給。これ、本当にやるとしたらマジで大変だぞ……。

実はその問題を解決する「eFishery」というサービスが、現実のインドネシアに存在します。

堀の中の魚がどうなっているのかを見極めたり、成長毎に餌の量を調節するというのは経験が必要な仕事でもあります。それらを堀の中に設置したセンサーで測定・検出し、スマホアプリに表示するというのがeFisheryの機能です。

『Aquaculture Land』は、給餌は従業員が手で撒きます。しかしeFisheryは独自開発の自動給餌装置を用意していて、魚の状態に合わせて適切な量を自動で撒いてくれます。もしも『Aquaculture Land』の世界にeFisheryが実装されたら、ゲームにならないほど簡単過ぎる難易度になってしまうでしょう。

インドネシア国内3万以上の養殖事業者と契約しているeFisheryは、これから突入するであろう食料難の時代を克服する切り札としても期待されています。

ティラピアやエビはインドネシア人にとっては「定番の食材」で、最近入ってきた新しい食べ物というわけではありません。日本では食用コオロギを始めとした「一般的に馴染みのない食べ物を普及させるアグリテック」が(やや懐疑的に)注目されていますが、eFisheryは同じアグリテックでもそれとは方向性が全く異なります。

しかし、インドネシアでも順調な事業拡大を遂げているアグリテック企業は「既に定着している食材をいかに増産するか」という方向性のもので、昆虫食のような「あまり馴染みのない食材を普及させる」という企業はあまり台頭していないようにも思えます。インドネシア人が好む食材は牛肉、鶏肉、米、大豆、海産物、淡水魚といったところで、実は日本人と大差なかったりします(日本と同様に大豆の加工食品が多いのも、インドネシアの食文化の特徴です)。

その中ではわざわざ昆虫食を導入するよりも、「過給餌による川の汚染を防ぐ淡水魚養殖」や「口蹄疫や鳥インフルエンザの発生を抑えつつ、より効率良く牛や鶏を輸送する仕組み」に重点を置いたほうが現実的です。それを可能にするAI管理システムや農家と運輸事業者、小売店のマッチングアプリなどは、まさにインドネシアで望まれている「文明の利器」と言えます。

そんな海外事情を窺い知ることができる『Aquaculture Land』は、Steamで配信中。日本語には非対応ですが、インターフェースにおいて英語をサポートしています。


 
   

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