だが新間はただでは転ばなかった。UWFのフロント陣と選手を分断、前田以下の選手にフリー宣言させて“UWF軍団”として全日本プロレスのマットに上げるという逆転劇を考えて馬場に依頼したのだ。
当時、前田はWWF、木村と剛はカナダ遠征中で、浜田はメキシコに戻っていたために、日本の状況を把握していなかった。
新間は、彼らにフリー宣言&全日本殴り込み宣言をさせるために5月24日にハワイに飛んで木村、剛、浜田と合流。3選手は新間に言われるままにフリー宣言し、ハワイに来られなかった前田は、新間の電話説明で事後承諾した形になった。
馬場はこの動きを受けて「こういうゴタゴタが起こると、一番迷惑するのは常に選手。まあ、全日本プロレスとしては、それらの宙に浮いた選手たちが純粋に戦いの場を求めたいというなら、その道までは阻まない」と受け入れを示唆。
しかし、帰国した前田、木村、剛の3人は6月1日に記者会見を行い、フリー宣言を否定して「UWFのリングでともに戦っていきます」と宣言。新間氏の巻き返しは失敗に終わった。
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それでも馬場は新間との約束を守り、浜田の全日本参戦を発表した。
小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。