
『舞いあがれ!』(NHK総合)が3月27日の放送より最終週を迎える。タイトルは「私たちの翼」。第25週でメインに描かれていたのは、刈谷(高杉真宙)や玉本(細川岳)を中心にして開発する「空飛ぶクルマ」。刈谷が提言する「誰でも気軽に空を行き来できる未来」を目指し、舞(福原遥)も自身の会社「こんねくと」と業務提携、さらに人力飛行機サークル「なにわバードマン」時代の渥美(松尾鯉太郎)だけでなく、西浦(永沼伊久也)や日下部(森田大鼓)も合流。新たなエンジニアを加え、開発は次なる段階へと突入している。
物語の最終盤で空飛ぶクルマを描くということは当初の企画段階から決まっていたと制作統括の熊野律時は明かす。人力飛行機で大空を飛ぶ楽しさに魅了された舞は旅客機のパイロットを目指すも、リーマンショックで傾いた町工場を立て直すため株式会社IWAKURAに入社。舞が御園(山口紗弥加)と起業した町工場と人を繋ぐ「こんねくと」が、刈谷の、そして舞の夢でもある「空を飛ぶ」という未来に向かっていく、というのがこの半年間で描かれてきた大まかなプロットだ。
「舞は作ること、飛ばすことの両方で関わり得るということと、これからのたくさんの可能性に満ちた未来があるというメッセージを込めたラストを描いていきたいと思っていました」
物語一つひとつのパートに通底しているのは、人との繋がり、助け合いのなかで、登場人物たちが新たな未来へと進んでいけるということ。ライト兄弟が世界初の有人動力飛行に成功したのは1903年。今から120年前の出来事である。コロナ禍を経て、人々は行きたい場所に行ける、会いたい人に会えるという当たり前のことができなくなる経験をした。
「改めて、人が空を飛ぶというのはすごいことです。一人ひとりの技術や知恵が結集することで空さえ飛べるということを描くことで、人間の可能性、明るい未来への希望を信じられる物語にしようという構想から『舞いあがれ!』は出発しているので、この現代において空飛ぶクルマまで到達していくのは必然だったのかなと思います」
広告の後にも続きます
一方で、第25週では短歌を詠むことが苦しくなってしまった貴司(赤楚衛二)が、心の師匠である八木(又吉直樹)に会うためフランス・パリへと旅立っていく。時は2020年1月。パンデミック直前のタイミングだ。
「貴司の物語も継続して描いていきたいというのはありました。歌人としてデビューしてからは、リュー北條(川島潤哉)のおかげもあり、わりと順調にきたように見えてはいたのですが、その裏で創作の苦しみを抱えていることが明らかになっていく。最終盤で貴司はもう一度自分にとって歌を詠むとは何かということに向き合っていきます」
最終週の予告では由良(吉谷彩子)、さらには柏木(目黒蓮)といった学生時代の懐かしい面々の姿も確認できる。今年1月末には五島での最終ロケが行われ、「舞がこれまで出会った人々の協力を得て、五島で空飛ぶクルマの飛行に挑むシーン」が撮影されたことも報道されており、物語がこの五島でのロケとどのように接続されていくかにも注目だ。(渡辺彰浩)