
この世の果てにある小さな島での物語。この島の「囁き森」で明かされるカトリーヌの秘密。カトリーヌが愛し、別れた人たちの秘密。しかし、この「囁き森」は呪われた森だといわれている……。※本記事は、智佳子サガン氏の小説『カトリーヌと囁き森』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
第一部 銀の画鋲
「本屋の主人」
僕は不吉な猫だ。そう言われた。
生まれてすぐ飼われた家の女主人の前を横切ったら、彼女は翌日に死んだ。
僕は彼女が死んだのはいい気味だと思った。
広告の後にも続きます
だって、すごくいやな女だったんだ。
旦那さんの見えないところでメイドをいじめて泣かせていた。
それに、僕を抱きしめながら人の悪口ばかり僕の耳に吹き込むんだ。もちろん、旦那さんの悪口も。
あの香水の匂いにもうんざりしていた。
女主人が死んだあと、僕はその家を出された。
不吉だってさ。