■宮野真守&緒方恵美のすごみを実感!吐息一つにも少年らしさが表れる
『シャザム!』(19)の続編で、古代の魔術師から6人の神のパワーを授かった、最強ヒーローの新たな戦いを描く本作。ごく普通の少年であるビリー(アッシャー・エンジェル)が魔法の言葉「シャザム!」と唱えると、大人の姿のヒーローに変身。しかしまだまだ半人前のヒーローである彼は、頭脳が子どもゆえに“神の娘”たちを怒らせてしまい、彼女たちが巨大なドラゴンを引き連れて地球に襲来する。
主人公シャザムの吹替を担当したのは、人気、実力共に声優界のトップランナーである宮野真守。超絶マッチョな身体を持ったシャザムだが、その中身は子どもであるため、行動力や好奇心も旺盛。ギャグや言葉遣いも少年らしいし、さらには青春期の揺れもあらわになるなど、くるくると変わる表情が大きな見どころだ。シャザム役のザッカリー・リーヴァイがその純真さをすばらしく体現しているのだが、宮野はリーヴァイとぴったりと息を合わせ、エネルギッシュに主人公を演じきっている。シャザムが前作でなにが起きたのかを説明する映画冒頭のシーンから、そのシンクロ具合とリズミカルな芝居に驚いた。リーヴァイが目や口、手足などどこかを動かせば、宮野がそのすべてを声の芝居にも反映。立ち上がる時の息遣い、アクションシーンでの叫びなど、吐息まで見事にシャザムとして一体化しており、一瞬たりとも観客を飽きさせない主人公がスクリーンにお目見えしている。
本作のイベントで宮野は、「シャザムはよく動く(笑)。ザッカリーさんのお芝居がおもしろすぎるから、それを日本語でつぶさに伝えたいなと思いました。テンションを合わせるのがチャレンジでしたし、たくさん台本にもメモしました」とリーヴァイの芝居を研究したことを明かしていた。経験と努力を注ぎ込んだシャザム役から、いまや声優業はもちろん、俳優、歌手、タレントとしても引っ張りだこになっている宮野の才能を改めて実感できるはずだ。
前作に引き続き、シャザムに変身する少年ビリー役を演じているのが、緒方恵美だ。前作での出来事から数年が経ち、ビリーも心身共に成長した。「ビリー、大きくなったな」ということが緒方の演技からも伝わり、これには「さすが…!」と感じさせられた。またビリーはもともと身寄りがなく、問題ばかり起こしていた少年だ。前作で信頼できる家族を得た彼だが、今回は家族を失うことへの恐れや将来の不安など、スーパーヒーローとしての活躍の裏側には、モヤモヤとした悩みを抱えている。「新世紀エヴァンゲリオン」で14歳の少年、碇シンジのナイーブさを演じきり、世界中のファンの心を鷲掴みにした緒方。イベントでは「仕事柄、どこかに14歳を住まわせておかないといけない。永遠の14歳だなと思います」と声優としての姿勢を語っていた緒方が、エンジェル扮するビリーの葛藤を繊細に表現し、観客に奥深い人間ドラマを届けてくれる。ビリーがどのように壁に向き合い、大人として成長していくのか。大いに注目だ。
■戸田恵子&朴ろ美&鬼頭明里が姉妹役で共演!怖すぎる“神の娘”たちに震える
シャザムの前に立ちはだかる、“神の娘”三姉妹の日本版声優もなんともゴージャスだ。冷酷&聡明でありつつ、シャザムに対して怒りを爆発させる長女のヘスペラ(ヘレン・ミレン)は、映画、ドラマ、アニメ、舞台と幅広いジャンルで活躍する戸田恵子が担当。威厳と品格をたっぷりと漂わせながらシャザムを追い込み、観客までを震え上がらせる。華麗なアクションも繰り出すクールさや、いつの間にか愛着が湧いてしまうような魅力のあるヘスペラは、百戦錬磨の戸田だからこそ担うことができたキャラクターだろう。
凶暴で野心煮えたぎる次女、カリプソ(ルーシー・リュー)を演じたのが、「鋼の錬金術師」のエドワード・エルリック役や、昨年は舞台「千と千尋の神隠し」で演じた湯婆婆役も話題となった朴ろ美。カリプソは、バッサバサと羽を広げる巨大ドラゴンに乗って地上に降り立つなど、ヴィランとして抜群の存在感を放つキャラクターだ。朴の芝居からも、戦いを楽しんでいるかのようなカリプソのダイナミックな迫力があふれだし、強烈なヴィランぶりに思わずニヤリとさせられる。
そして謎めいた三女で、物語の重要な秘密を握っているアンテア(レイチェル・ゼグラー)に抜てきされたのが、大のヒーロー映画好きでもある鬼頭明里だ。「鬼滅の刃」ではセリフの多くを唸り声で表現しなければいけない難役である禰豆子に挑戦して、表現力の振り幅を示した鬼頭。本作では、地球を襲来するはずの存在でありながら、周囲を虜にしてしまうようなキュートな魅力満載のアンテアを溌剌と演じ、観る者をクギ付けにする。戸田、朴、鬼頭という世代を代表する声優たちが、個性だらけの“最恐姉妹”として共演していることも、本作の吹替版が見逃せない大きな理由だ。
■ここにもあそこにも豪華な声優が…お宝を探すような楽しさ!
まだまだ本作には、豪華声優がひしめき合っている。ビリーを支える親友フレディ(ジャック・ディラン・グレイザー)を演じるのは、「銀魂」の志村新八役や、「炎炎ノ消防隊」のヴィクトル・リヒト役などで知られる阪口大助。本作では、ビリーとの絶妙なコンビネーションだけでなく、女の子の前で緊張して声がひっくり返ってしまったり、彼女の一挙手一投足に戸惑ったり、喜んだりと、“恋するフレディ”をみずみずしく演じている。
ビリーの養姉妹であり大切な仲間のメアリー(グレイス・キャロライン・カリー)は、「涼宮ハルヒ」シリーズのハルヒや、「DEATH NOTE -デスノート-」の弥海砂役で大人気を博し、ミュージカル界での活躍も目覚ましい平野綾。同じくビリーの仲間であるユージーン(イアン・チェン)は、人気子役で成長も著しい寺田心。ビリーに“シャザム”の力を与える魔術師シャザム(ジャイモン・フンスー)は、「銀魂」の坂田銀時役や「ジョジョの奇妙な冒険」のジョセフ・ジョースター役などでお馴染みの杉田智和。転機を迎えたメアリーのジレンマや魔術師のこじらせぶりも興味深く、声優たちの熱演も光るカラフルなキャラクターたちが、物語の世界観を一層深化させている。さらに遠藤綾や小野大輔、櫻井孝宏、三石琴乃、楠大典などなど、錚々たる声優陣が参加。スピード感も最高で、テンションがぶちあがる展開の連続となる本作。その勢いに存分に乗っかるためにも、字幕版と共に、ぜひ吹替版も楽しんでほしい。
※朴ろ美の「ろ」は「王へんに路」が正式表記
※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正式表記
文/成田おり枝