アンコールではアルバム収録の新曲「Happy Ending」が披露された。親密な相手に語りかけるようでも、独白のようでもある、エバーグリーンな響きを持った切なくあたたかなラブソングが、今日という日の余韻をじっくりと我々に刻んでいく。最後はとびきりのテンションで投下した「Over You」。新たな約束(およそ2ヶ月後にリリースされるニューアルバムに伴うツアーも告知された)を確かめ合うように、「元気で!また会いましょう!」、そう言ってライブを締め括った。

初期の曲も、久々の曲も近作の曲も、明るい曲もアップテンポな曲もバラードもあった。それらを、曲ごとに編成を変えつつも"11人のバンド"として、元々そうであったかのように鳴らしきっていた。なぜか。公演数が多かったことによる習熟度の高さだけではない気がする。元々、井上竜馬の脳内で生まれ、4人が形にしていくSHE’Sの音楽は、スタンダードなバンドサウンドのみでは再現しきれるものではなかった。だからこそ、彼らは今より活動規模の小さい段階から意欲的にこの『シンクロ』へと取り組んできた。そして今、各々の技量やアレンジ力の向上により、いよいよバンドが目指してきた姿に追いついてきたことで、このスペシャルな編成と今まで以上にシンクロした、ということではないだろうか。だとすると、この日に願望として語っていた『シンクロ』での全国ツアー実現にも期待が膨らむ。それは決して夢物語ではないはずだ。
取材・文=風間大洋 撮影=MASANORI FUJIKAWA