
(左から)古田新太、宮沢氷魚
韓国や日本のみならず、世界各国で爆発的にヒットした映画『パラサイト 半地下の家族』が舞台化される。“格差社会”をテーマに、サスペンスでありブラックコメディ、さらにはヒューマンドラマとしても評価され、軽々と国境を越えて人々の心を掴んだこの作品。日本で舞台化するにあたり、台本と演出を手がけることになったのは鄭義信(チョンウィシン)だ。映画化もされ数々の演劇賞に輝いた名作『焼肉ドラゴン』や、近年では『泣くロミオと怒るジュリエット』や『てなもんや三文オペラ』等の上演でも話題を集めた鄭による日本版は、物語の舞台をソウルから日本の、それも関西の下町に置き換えるという。さらにリアル度を増した、舞台版ならではの展開も期待できる。
そして注目すべきは「原作のイメージにぴったり!」「よくぞここまで個性派を揃えた!!」と、大評判になっているキャスト陣の顔ぶれだ。“パラサイト(寄生)”する側の家族、金田家の主<文平>には劇団☆新感線の看板役者である古田新太、長男<純平>には映像に舞台にと話題作への出演が続く宮沢氷魚、長女<美姫>には伊藤沙莉、妻<福子>には江口のりこが扮し、一方の“パラサイト”される側の永井家ファミリーを演じるのは山内圭哉、真木よう子、恒松祐里。物語のキーパーソンとなる家政婦にはキムラ緑子が、加えて舞台版オリジナルの登場人物をみのすけが演じることになっている。
稽古開始にはまだ間のある3月初旬、これが初共演となる古田新太と宮沢氷魚に作品への想いや、これが初顔合わせとなる鄭の演出を受けること、さらにはこの濃いカンパニーの顔ぶれなどについて語ってもらった。

(左から)古田新太、宮沢氷魚
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ーー映画『パラサイト 半地下の家族』を鄭義信さんの演出で舞台化するという今回のオファーを受けて、まずどんなことを思われましたか。
古田:鄭さんとお芝居をやりたいなということは、以前からずっと思っていて。これまでに何度か機会はあったんですけど、タイミングが合わなくて叶わなかったんです。今回、また鄭さんが声をかけてくれて「『パラサイト』をやる、それも舞台を日本に置き換えて」って言うんで、「おぉっ? それは面白そうだな」と。映画の『パラサイト』は好きだったし、きっと鄭さんのことだからあの物語を、より笑えて悲惨な話にしてくれるんだろうなと思ったのでオイラとしては「喜んで!」という気持ちでした。
宮沢:僕は、とにかく驚きました。あの作品を舞台化するんだ! という驚きもあったし、韓国ではなく日本で舞台化するということにも驚いたし、それを演出するのが鄭さんだということも重なり、何よりも自分がこの作品に出ることもまったくイメージできていなかったのでかなり驚きました。キャストも錚々たる方々が集まっていて。その中に自分がいられるなんて、わかった瞬間からもう楽しみで仕方がないです。台本も読みましたが、鄭さんならではの笑えるところもあり、でも一貫して伝えたいこと、テーマがしっかりとある作品になっていて。数々の驚きの先には、とても大きな楽しみも待っていました。
ーー映画『パラサイト 半地下の家族』という作品自体には、どんなことを感じられましたか。
古田:劇中でいうところのオイラの家族も、(山内)圭哉と(真木)よう子のところの家族にも、現実の自分自身の家族はまったく被るところがないんですよ。だから映画館で見ていた時も、みんながシーンとしているところでひとりだけ「ハハッ!」って笑っちゃったりしていました。でもそういう部分も含めて、鄭さんが書く人間臭いドラマの表現にはとても合うように感じます、特に映像ではなく今回はそこに役者がいますし。それと、鄭さんは千穐楽までずっと現場にいて、本番中もダメ出しするタイプの演出家だと聞いてるので、それはすごく舞台俳優としてはありがたいことだなと。いろいろ変えてみて、もしもダメだったところはやめろと言ってくれるだろうし、面白ければ褒めてくれるわけですから。その結果、この『パラサイト』という物語に登場する二組の家族の、寄生しようと企んでる側と寄生されてしまう側の人間模様がより悲惨な結果になっていくはず。そこをぜひ、舞台を観に来たお客さんにも楽しんでいただきたい。実は映画を見た時点から、オイラは「これ、舞台化しねえかな」と思ってたんですよ。きっと、ナマだからこそより臨場感を持って、映画よりリアルにお届けできるんじゃないかなと思っています。

古田新太