マッシーをめぐる1万ドルの謎

表紙は左が巨人・長嶋茂雄、右上が広岡達朗、右下がまだ国鉄の金田正一
今回は『1965年1月4日号』。定価は50円だ。
オリンピックイヤーも終わり、いよいよ昭和40年がやってきた。
日本人メジャーとしてSFジャイアンツで華々しい活躍をした南海・村上雅則が、12月16日に帰国した。
村上は1月にはまた渡米し、来季もSFジャイアンツでプレーするつもりでいるが、事態は簡単ではない。
南海・新山代表は「村上は絶対にうちの選手。当然、来季も南海でプレーする」と興奮気味にまくしたてた。
今回問題になっているのは、SFジャイアンツから南海に渡された1万ドルだ。SFジャイアンツは、「これはトレードマネーであり、南海はそれを受け取った。だから村上はうちの選手」と言っている。大して南海は、
「村上、高橋、田中の留学生を送るとき、この中から大リーグ入りする選手がいたら5000ドルから1万ドルの功労金を出すという約束があった。だからこっちは功労金として受け取った」
と力説。平行線をたどっている。
前回ふれた金田正一の国鉄退団が正式決定。巨人入りが濃厚となっている。経緯を簡単に書いておく。
12月14日、金田は国鉄本社を訪問し、長くお世話になった磯崎副総裁にあいさつ。その後、金田は本社内の部屋部屋を回り、
「みなさん、金田がお別れにきました。本当にお世話になりました。今後、どの球団で働くとしても、みなさんのことは決して忘れません」
と言って深々と頭を下げた。顔は涙をこらえ、クシャクシャ。取材にあたった記者たちも泣いていた。
国鉄には金銭で金田を移籍させる選択肢もあったが、金田がこれを拒否。B級10年選手の権利を行使し、退団後はセ・鈴木龍二会長管轄の特別保留選手となった。
金田はウエーバーで下位球団の中日、広島のどちらかに入るよう会長が指示することになるが、金田に拒否権があるので、おそらくその後、巨人入りとなるはずだ。
「プロ野球稼ぎ頭50傑」という年俸ランキングがあった。書くと長くなるのでスキャンした記事を掲載しよう。

相撲番付風のプロ野球年俸上位者ランキング
ちなみに、前号の表紙文字「カリブ海沿岸に進出する東映」に興味を持たれた方がいるようなので簡単に。記事はアメリカから中米を回る旅に出る東映の水原茂監督の出発前にインタビューだ。
目的はメジャー経験の選手の年俸が高いので、無名だが身体能力の高い中米の選手をスカウトしたい、というのと、向こうでやっているウインター・リーグに東映を参加させることができないかの交渉をするということだった。
いずれも最近思いついたことではなく、巨人監督時代からのプランのようである。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM