『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022~POINT TO POINT~』
2023年3月1日(水) 立川ステージガーデン
彩り豊かで温かくて熱いライブだった。音楽の楽しさと音楽への愛がたくさん詰まったコンサート空間が気持ち良かった。『KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2022~POINT TO POINT~』の立川ステージガーデンでの公演。松下洸平の出身地は八王子なので、準ホームグランドとも言えそうな場所でのライブだ。オープニングのSEが流れると、会場からハンドクラッブが起こった。ステージの背後の巨大なLED画面に時計や地球をモチーフにしたアート感覚あふれる映像が映し出されている。テーマとなっているのは、おそらくはアルバムタイトル&ツアータイトルの“POINT TO POINT”だろう。

オープニングナンバーは1stアルバム『POINT TO POINT』収録曲の「リズム」。軽快なギターのカッテイングに合わせて、客席からハンドクラップが起こり、サックスが加わり、松下洸平の歌が始まった。伸びやかで軽やかな歌声が高らかに響きわたっている。<高まっていく鼓動を信じて><自由になろう><新しい世界見に行こうよ>といった松下の歌声が観客をライブへといざなっていく。コンサートの始まりにふさわしい歌だ。冒頭からバンドとの一体感あふれるステージを展開した。バンドのメンバーは下手側から、平野晋介(Key)、KenT(Sax)、永井隆泰(Ba)、海老原諒(Dr)、足立賢明(Mani)、カンノケンタロウ(Gt)の6人。サックスが加わることで、R&Bやソウルのテイストが色濃くなっていると感じた。「Color of love」では観客が腕を左右に振って参加。間奏では「楽しむ準備は出来ていますか?」と松下が何度も客席をあおっていた。松下のリズミカルな歌声とバンドの鮮やかな演奏がホールをカラフルに彩っていく。

「去年ここでやる予定でしたが、延期になってしまいました。その時のチケットをみんなが大事に取っておいてくれたおかげで、これだけたくさんの人が集まってくれたよ! ありがとう」と松下。その喜びと感謝の気持ちが、そのまま歌の中にも注ぎ込まれていると感じた。ひとつひとつの言葉を丁寧に紡いでいく歌声が染みてきたのは、「エンドレス」だ。続いての「つよがり」もせつなさが滲み、あふれだしていく。歌うほどに高まっていくエモーショナルな歌声をバンドの演奏が優しく包み込んでいた。
「立川は地元です。厳密に言うと、八王子なのですが、中高と立川の駅で踊りまくっていたので、僕の青春が詰まっています」とのことで、しばし地元トークが続いた。テンション高めだが、同時にリラックスした柔らかな雰囲気が漂っていたのは、ホーム的な場所でのステージだったからだろう。海や砂浜の映像が映し出される中で、沖縄で書いたという曲「体温」も披露された。ピアノと歌での始まり。歌から見えてくる景色と映像とがシンクロしていく。
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「あなた」と「One」は音楽学校時代からの友人でもあるカンノのアコースティックギターとの2人だけでのステージ。「あなた」は松尾潔が作詞したラブソングだが、松下の繊細さとひたむきさを備えた歌声がよく似合っている。10代のころからのつきあいという2人の息もぴったりだ。ここまでの6曲は1stアルバム『POINT TO POINT』収録曲が続く構成。ライブで演奏されることによって、個々の歌の生命力や人間味が増していくようだった。
「このコーナー(2人での弾き語り)、家で歌っているような安心感がありますね」と松下が言うと、「僕の包容力ですかね」とカンノ。こんなやり取りからは2人の関係性もうかがえる。「みなさんの毛布になれたらいいな」とのMCに続いては、ミニアルバム『あなた』収録曲の「One」。この曲も2人だけでの演奏だ。毛布にたとえるならば、日干しして太陽の光をいっぱい浴びた、ふかふかの毛布。温かさと柔らかさを備えたファルセット混じりの歌声が会場内を包み込んでいく。
「音楽ってすごいと思います。普段はこっぱずかしくて言えないセリフも、音楽の力を借りると言えるんですよ。歌詞を書く時も、音楽の力を借りることで、大好きな人に“大好き!”って腹から声を出して言えますね」との言葉に続いては、「Only you」。ストレートなラブソングでありながら、観客への愛と感謝を込めた歌のようにも聴こえる。人間味あふれる歌と演奏が染みてくる。KenTがフルートを吹く場面もあった。客席のハンドクラップも一体となって会場内に温かな空気が充満した。


「ハロー」では静と動を行き来するように、曲が進むほどにエモーショナルなエネルギーがほとばしっていく。「Way You Are」では会場全体がハッピーな空気に包まれた。観客を祝福し、そして勇気づけるような歌だ。松下が飛び跳ねたり、走ったりしなから歌っている。一瞬、アカペラでの歌を挟み、さらなる高みへと向かっていく。銀テープも発射された。グルーヴィーな歌と演奏が気持ち良かったのは「KISS」、自己解放を促すパワーが体を揺さぶったのは「FLY&FLOW」だ。ライブならではの醍醐味を堪能できる曲が続く熱い熱い展開を、「みんな最高!」と笑顔とシャウトで締めた。


「このメンバーで日本中を回ってきました。出会った人々の気持ちを乗せて、ファイナルの大阪まで進んでいきます。僕らが乗っているのは歌うことでしか前に進めない船だと思っています。みんなの気持ちを乗せて」という言葉に続いては、本編ラストの「旅路」。<探そう 僕らの音が響く新しい場所>というフレーズが印象的だ。音楽への思いが詰まった真っすぐな歌声が深く強く届いてきた。
アンコールでは、松下がピアノの弾き語りで「みんなが見てる空」を披露した。途中でミスして止まってしまい、「こんなことある?(苦笑)」と言ってやり直す場面もあった。それはそれでライブならでは。飾らない彼の人間性までもが伝わってくるようだった。彼の端正な歌声とピアノの音色の相性は抜群だ。ピアノでの弾き語り、今後への期待も広がった。

2023年3月21日