■「僕らのミクロな終末」とは
同作は、実写ドラマがヒットした「ポルノグラファー」で知られる丸木戸マキによる同名コミックを原作に、地球滅亡寸前というSFなシチュエーションで異色の終末を描く恋愛ヒューマンドラマ。傷を抱えた不器用な登場人物たちの心情が交差する恋愛模様と同時に、絶望の中で奇跡を信じたくなるようなストーリーを展開していく。
主人公・仁科真澄を瀬戸が、真澄の大学時代の“昔の男”・日下部律を中田が、アイドルオタクのピュアな男子高校生・広瀬遊馬を富本惣昭が、国民的アイドル・嘉神まどかとその”自称妹”・めぐるの一人二役を井手上漠が演じている。
また、真澄と律が大学時代所属していた出版サークルの同級生・橋本陽介役に大朏岳優、サークルの部長・露口役に前田瑞貴、律に夢中なミスキャンパス・谷口美佐役に西村美柚と、フレッシュな面々が共演。さらに、真澄の母親役に遊井亮子、律の母親役に岡谷瞳、律の父親役に成松修、めぐるの母親役に舟木幸、めぐるの父親役に飯田基祐が配役されている。
主題歌は、水野良樹が主宰するプロジェクト“HIROBA”から「ふたたび(with 大塚 愛)」。作詞作曲は初のタッグとなる水野&大塚愛が共作、編曲は蔦谷好位置が手掛け、真澄と律のもどかしく、苦しくも愛おしい関係性に重なる楽曲の世界観が、同作のストーリーに寄り添う。
■律が「お先に」と薬を口に含む…!
真澄と分かれてからも真澄のことが忘れられなかった律。サークル仲間の同級生に真澄の連絡先を聞くが、真澄のことを思って教えられないと断られてしまう。
焚き火に当たりながら、真澄に会いたかった昔のことを思い出す律。そして、律はおもむろに白いカプセルを取り出すと、「お先に」と言って口に含むのだった。
■「ここでお前がいなくなったら!」と真澄は泣き崩れる
真澄がやってきて律を地面に押し倒すと、出せよ!と激しく律の背中をたたきつける。「お先にってなんだよ! 無責任過ぎるだろ!」と律の胸ぐらを掴む真澄。お前なんか死んじまえと怒る真澄に律は落ち着けとなだめる。
真澄は「ここでお前がいなくなったら! 俺のことなんて考えてないんだな…!」と律の胸が泣き崩れる。「悪かったよ、本当ごめん」と律は言うのだった。
翌日、自転車で山間を走る一行。真澄と律は二人乗りで自転車に乗る。「真澄、昨日は、その…」と律が言いよどむと、「見なかったことにする。今は松本に向かうことだけを考えよう」と真澄は優しく言葉を遮る。律は昨日は馬鹿なことをしたと心の中で反省するのだった。
律にとっても真澄の存在は大きく忘れられない人となっていたことと実は律も心の闇が深かったことが分かり、胸が痛くなる。そして、彼らに明るい未来が訪れることを願わずにいられなかった。
◆構成・文=牧島史佳