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『ハマ蹴り』が提示してくれた新しい生き方 紘一といつかの恋が永遠に続くことを願って

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『ハマる男に蹴りたい女』©︎テレビ朝日

 オトナの恋は、好きだけで突っ走ることができない。傷つきたくないから強がってみたり、将来を考えて恋を終わらせようとしてみたりする。

参考:『ハマ蹴り』は土曜夜にぴったりのドラマ 藤ヶ谷太輔と京本大我の対照的な魅力にハマる

 これまでのいつか(関水渚)も、そうだった。紘一(藤ヶ谷太輔)との関係を進展させるのが怖くて、無理に強がって。彼の将来のために、「管理人さんのこと、好きになれそうにありません」と嘘をついたこともあった。

 でも、縁がある相手とは、何度気持ちが離れても必ず結びつく。『ハマる男に蹴りたい女』(テレビ朝日系)は、恋に不器用なオトナたちに、“そのままでいいんだよ”と伝えてくれるドラマだった。

 本作においていちばん感慨深かったのが、紘一が出世や数字以外の達成感を初めて知れたこと。序盤の彼は、はっきり言って管理人の仕事を小バカにしていた。たしかに、億単位のプロジェクトを動かしていた人が、たった80円のために特売セールに挑むとなれば、虚しくなるのも無理はないだろう。

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 それに、仕事は数字で評価してもらえるが、家事の成果は目に見えて分かりづらい。必死で頑張ったって給料が上がるわけでもないし、昇進するわけでもない。でも、自分が作った料理を美味しそうに食べてくれて、綺麗な部屋を見て「ありがとう」と微笑んでくれる人がいる。それって、数字では表せない、何ごとにも変えがたい“幸せ”なのかもしれない。紘一が、何気ない幸せを見つけることができて、本当によかった。

 ただ正直なところ、「紘一はふたたびエリート人生に戻るのかな?」とも思っていた。なぜなら、彼のまわりにいる人は、母のしま子(大地真央)や元妻の夏美(早見あかり)など、“輝いている紘一”に戻ってきてほしいと願っている人が多かったから。しかし、紘一は大勢の人に喜んでもらうよりも、たったひとりの人(=いつか)に喜んでもらえる人生を選んだ。

 時折、彼の姿が『アットホーム・ダッド』(フジテレビ系)の山村(阿部寛)に重なって見える瞬間があった。紘一の場合は専業主夫ではないけれど、仕事人間でエプロンよりもスーツが似合って、自信家なところもちょっぴり似ている。『ハマる男に蹴りたい女』も、紘一といつかのじれったい恋愛を描きつつ、『アットホーム・ダッド』のような新しい生き方を提示してくれたような気がするのだ。

 また、いつかが紘一に、ネクタイではなくエプロンをプレゼントしたのも、“男らしくいなくちゃ”と思っている彼の呪縛を取り除いた瞬間のように思えた。男だから仕事ができなきゃいけないわけではない。女だからって家事が得意じゃなくてもいい。そんなふうに、新しい価値観を持っているいつかの前だから、紘一は強がらずに泣くことができたのだろうか。

「こんなふうに足蹴りするのは、金輪際私だけにしてください!」

 紘一を蹴り飛ばしたあと、遠回しすぎる告白をしたいつか。やっぱり彼女は、最後までツンツンしたままだった。だけど、紘一は“そのままでいいんだよ”と言わんばかりにギュッと抱きしめる。素直になれないいつかの強がりも、弱さも、全部分かってくれている紘一のハグ。2人のレモンパイよりも甘酸っぱい恋が、永遠に続くことを願ってやまない。(菜本かな)

 
   

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