まず、前提として、賃貸借の更新契約の締結の際に、保証人とも新たに保証契約をしなければ更新後は保証契約は効力を失ってしまうのか、という問題があります。
この点については、最高裁判所平成9年11月13日判決が以下のように述べて、原則として、改めて保証人と契約を締結しなくとも賃貸借契約更新後も保証人の責任は継続すると判断しています。
「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人のために保証人が賃貸人とのあいだで保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、
保証人は、賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである。」
更新時「新たに保証契約をしたか」で判断が分かれる
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以上を踏まえると、本件の問題は
②賃貸借契約の更新の際に、保証人とは別途書面の取り交わしはしない
の2つの場合に分けて考える必要があります。
まず、①の場合は、改正民法施行後に新たな保証に関する合意があったといえるため、保証契約は改正民法の適用を受けることになります。したがって、保証契約の更新において、極度額の定めをしなければ、保証は無効となってしまいます。
次に②の場合ですが、この場合、更新時に、新たに保証人と契約をしなくとも前述の最高裁判例の解釈に基づけば、当初の保証契約の責任の効力が、更新によっても失われずにそのまま継続するものと解されます。
そして、改正民法施行後に、保証契約に関し新たに合意をするものでもありませんので、改正民法の適用は受けず、極度額を別途定める必要もない、というのが法務省の見解のようです。
以上を踏まえると、改正民法施行後の賃貸借契約の更新において、保証人からもなにかしらの書面にサインを貰う場合には、改正民法の規定を意識した対応が必要になることに注意が必要です。
※この記事は2020年6月3日時点の情報に基づいて書かれています(2023年2月17日再監修済)。
北村 亮典
弁護士
大江・田中・大宅法律事務所