top_line

【スマートフォンアプリ(Android/iOS)配信終了のお知らせ】

事件解決に向けて大きく前進、サケの稚魚が全滅した原因が発覚!

幻冬舎ゴールドライフオンライン

舞台は北海道・根釧原野。時代の流れとともに酪農が拡大し、人間たちのみかけの暮らしがよくなった一方で、シマフクロウとサケの母なる川・ニシベツ川は汚染されてしまった。この現実を目の当たりにしたニシベツ実業高校・酪農科と水産科の生徒たちは、互いに意見をぶつけ合いながら、問題解決に向けて奮闘する。実際の調査をもとに描かれた、地域社会の未来を切り開こうとする若者たちの成長物語。※本記事は、草野謙次郎氏の小説『ニシベツ伝記』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

三.乱闘

実験室は簡素なつくりである。ガラス器具といくつかの試薬が収められている戸棚と、双眼実体顕微鏡が置かれている小さな実験台、それに蒸留水が入ったポリタンクといくつかの水質を測定する機器が何台か置かれているやや大きい実験台、これがこの実験室のすべてである。この実験室に、春のシャープな光が差し込んでいる。

久保田はガスバーナーと一Lビーカーで湯を沸かしていた。このビーカーを、軍手をはいてつかみ、急須に注ぐと緑茶の香りがふわっと広がった。手早く湯飲みに注ぐと、大河たちに緑茶を勧めた。大河に出丸、川原が少し口に含むと、さわやかな苦みが口に広がった。

大河は切り出した。

「ニシベツ実業高校のサケ稚魚が全滅したってことは、ご存じですよね」

広告の後にも続きます

「水温とpHには異常はなかった。しかし、溶存酸素が低くなって、電気伝導度が高かったんです」

「電気伝導度が高いということは、川の水が汚れているっていうことは分かるんですが」

「そもそも『電気伝導度』って何者か、俺たちにはよく分かりません」

出丸と川原もうなずく。久保田は少し考えたあと、ゆっくりと話し始めた。

「サケ稚魚の全滅が、電気伝導度のせいだと、ただちに言いきることはできないが……」

「電気伝導度が何者かは説明することはできる」

  • 1
  • 2
 
   

ランキング

ジャンル