
99歳になった敏子。第二次世界大戦を経験した敏子は、当時の生活を語り継ぐべく話し始める。姑にいびられ、孫も可愛がってもらえなかったある日、1歳になった息子が高熱を出し病院へ行くと、栄養失調が原因で体調を崩していることが判明し……。※本記事は、小倉敬子氏の小説『白寿の記憶』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
がんばれ、新人添乗員
最初からやばい!
次の週、研修旅行と添乗予定の発表があった。
「今年度の研修旅行に参加する人が決まりましたので、発表します。三田さんは八月にグアムでのツアー研修、森さんは十一月にハワイでホテルの研修、安藤さんは十二月にタイの旅行社の招待です。まだ研修等に行っていない方も来年度に研修、または添乗に行っていただきます。
それぞれ目的や内容、期間は違いますが、出張扱いですので大いに勉強してきてください。行くまでに、主催者側から旅程や研修内容などの資料が来ますので、事前に準備して有意義な研修になるようにしていただきたいと思います」
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呼ばれた社員はにこにこ顔である。
「それから、夏の添乗員が決まりましたので併せて発表します。アメリカ二週間は支店長と山田さん、谷山さんと石井さん。また、九月のハワイは昨年研修に行った江口さんです。今後も決まり次第発表しますので、よろしくお願いします」
「山田さん、初めての添乗おめでとう。がんばってね」と、三田さん。
数日前にはぶすっとして目も合わせてくれなかったのに、コロッと変身している。田中係長を見ると、ほらね、とばかりにウインクで返してきた。これで仕事もやりやすくなるだろう。実際、その後は誰に手続きのことを聞いても丁寧に教えてくれ、ほっとした。
しかし、同じツアーの別のバスに乗る二年先輩の谷山は
「大体、入社数か月で添乗に出すなんて会社も無謀なことするなあ。まあ、お手並み拝見と行きましょうかね」