過去に発売された作品を見ても、なぜかホラーゲームには秀逸なキャッチコピーが数多く存在します。今回はその中から、とくに珠玉と言えるものを4つ振り返ってみましょう。
◆そこを歩く、という恐怖。
まず1つ目はホラーゲームの金字塔、初代『バイオハザード』から。2002年にゲームキューブでリメイク版『バイオハザード』が発売された際、話題を呼んだのが、「そこを歩く、という恐怖。」というキャッチコピーでした。
初代『バイオハザード』の舞台は、アメリカの中西部にある洋館。ゾンビがはびこる極限の環境から生き延びるため、プレイヤーは洋館の中を奔走していきます。
静寂に包まれた建物、どこからともなく忍び寄るゾンビ、定点で固定されたカメラ…。あらゆる要素が恐怖をかきたてる作りとなっており、まさに“歩く”だけでも一苦労でした。
しかも今よりもアクション性が低く、キャラクターの操作がもどかしかったことも、恐怖の演出に一役買っています。近年のホラーゲームは操作性を高める方向にあるため、歩くだけで恐ろしいゲームというのは、この時代ならではの産物だったのかもしれません。
◆どうあがいても、絶望。
2003年にPlayStation2から発売された『SIREN(サイレン)』は、羽生蛇村という廃村を舞台とした傑作ホラーゲーム。発売当時は珍しかった和風ホラーの世界観で、プレイヤーにトラウマ級の恐怖を植え付けました。
同作を語る上で外せないのは、やはり伝説のテレビCMでしょう。完成度が高すぎるあまり、子どもが怖がるという苦情が殺到し、放送中止になった逸話があるのですが、その映像には「どうあがいても、絶望。」という禍々しい文字が流れていました。
ゲーム内で、プレイヤーはメイン主人公の須田恭也を始めとしたキャラクターたちを操作し、屍人がひしめく羽生蛇村からの脱出を目指します。ですがそのストーリーは悲壮感に満ち溢れており、まさしく絶望というほかありません。
ちなみに印象的なキャッチコピーは、公式にもネタにされています。たとえば、ディレクターを含む開発スタッフが全面監修したというLINEスタンプには、「どうあがいても絶望」というスタンプが。恐怖でどうしようもない時に使うのがオススメです。
◆あなたのせいで、死体が増える
『かまいたちの夜』といえば、1994年にスーパーファミコン用ソフトとして発売されたチュンソフトの名作ゲーム。それ以降もさまざまなハードに移植されており、キャッチコピーである「あなたのせいで、死体が増える」も広く知られています。
同作は、画面に表示されたテキストを読んでいくサウンドノベルゲーム。度々現れる選択肢の内容により、シナリオが分岐していくマルチエンディング方式で、画期的なゲーム性となっていました。
ですが同作のシナリオは、「殺戮にいたる病」で知られる小説家・我孫子武丸が手掛けており、れっきとしたホラーサスペンス。自分の選択によって次々と殺人事件につながっていくので、“あなたのせいで”という表現は、悲しいことにその通りとしか言いようがありません。
◆夜の怖さを覚えていますか?
誰もが子どもの頃には、暗い夜道を歩く時に恐怖を感じていたはず。その原初的な感情を見事に言い表しているのが、2015年に日本一ソフトウェアが発売した『夜廻』のキャッチコピー「夜の怖さを覚えていますか?」です。
『夜廻』は、まさしく夜道を探索することをメインとしたホラーアドベンチャーゲーム。主人公の少女は、飼い犬と姉を探すために夜の街をさまようのですが、そこでさまざまな出来事に襲われることに…。
ゲーム自体は、“夜の暗さ”がもつ不気味さと恐ろしさをとことん表現した内容。プレイヤーは懐中電灯の光を頼りに夜道を探索するのですが、否応なしに夜の怖さを思い出すことになるでしょう。
なお、2017年にPS4とPSvitaで発売された続編『深夜廻』のキャッチコピーは、「あなたを さらいに 夜がくる」というもの。ですがそのPVには、『夜廻』と対になるような「この恐怖も孤独も悲しみも、いつか忘れてしまうのかな。」というフレーズも使われていました。
恐怖とは、人間が生きていく上で避けられない根源的な感情。ホラーゲームの秀逸なキャッチコピーは、その神髄に迫る部分があるため、いつまでも人の記憶に残り続けているのかもしれません…。