■エンタメ一家に生まれ育ちキャリアデビュー
「ボストン・キラー」は1960年代初期にアメリカ・ボストンを震撼させた連続殺人鬼“ボストン絞殺魔”事件を解決へ導いた2人の女性新聞記者の勇敢な姿にフォーカスし、新たな視点で描いた実話に基づくクライム・サスペンス。ディズニープラス「スター」で独占配信される本作で、キーラ・ナイトレイは新聞記者・ロレッタを演じる。「男性は仕事、女性は家庭」という考えが当たり前だった当時のアメリカで、家庭と仕事の両立を懸命に図るロレッタの姿も見どころの一つ。キーラ・ナイトレイ自身も現在は母であり女優としても活躍を続けている。
俳優ウィル・ナイトレイと脚本家シャーマン・マクドナルドというエンタメ一家に生まれたキーラ・ナイトレイ。英国出身の彼女は幼い頃から、両親の仕事ぶりに影響を受けて、早くから女優としての仕事に興味をもっていたそう。
6歳の時に発達性読み書き障害であることが判明した彼女にとって学校生活は楽なものではなかったが、幸い協力的な先生たちに恵まれ、俳優活動という楽しみと学業を両立することで自信を失うことなく子供時代を過ごすことができたのだとか。こうして俳優としての道を歩み始めた彼女は、1993年にTVシリーズでデビューを果たす。
1999年公開の「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」で初めてメジャー作品に出演。当時12歳だった彼女が演じたのは、ナタリー・ポートマン演じる女王パドメ・アミダラの侍女サーベで女王の影武者にもなる役どころだった。このことが証明しているように二人はハリウッドきってのそっくりさんとして知られていて、間違われることが多々あるのだとか。
サッカー大好き少女を主人公にした2002年公開の青春映画「ベッカムに恋して」で世界的にブレイク。これを機に一気に存在感を増し、2021年までノンストップで仕事を続ける超人気女優へと成長していく。
■大ヒット作「パイレーツ・オブ・カリビアン」との出会い
自身にとって一番の代表作といえる「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ。その第一作目「-呪われた海賊たち」に出演したのは2003年のこと。ディズニーランドのアトラクション“カリブの海賊”を映画化したアクション・アドベンチャーで「シザーハンズ」のジョニー・デップと「ロード・オブ・ザ・リング」のオーランド・ブルームと共演。海賊に憧れる総督の娘エリザベス・スワンを演じ、「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」でも同役を演じた。
オーディションでこの役を勝ち取った彼女だが、当時わずか17歳。オーディションのために映画の街ハリウッドがあるロサンゼルスに初めて降り立ち、ディズニーの計らいで初めてカリブの海賊に乗ったそう。見事、役を射止めた彼女は母シャーマン同行の元、撮影を行ったという。
■初のアカデミー賞候補になるまで
2003年に英国出身の豪華俳優が大集結した傑作ロマンス『ラブ・アクチュアリー』に出演し、ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、コリン・ファースらと共演したことで正真正銘、スターの仲間入りを果たしたキーラ。
2004年公開の歴史アドベンチャー「キング・アーサー」では「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジェリー・ブラッカイマーが製作を務め、再タッグ。そして2005年、ジェーン・オースティンの名作文学「高慢と偏見」を映画化した「プライドと偏見」で主演を務め、初めてアカデミー賞主演女優賞候補に選ばれる。本作でメガホンをとったジョー・ライト監督とは「つぐない」や「アンナ・カレーニナ」でもタッグを組んでおり、抜群の相性を発揮している。
その他にも19世紀の日本を舞台にした「シルク」や18世紀後半の英国貴族の世界を描く「ある公爵夫人の生涯」、19世紀に実在した女性作家の半生を辿る「コレット」などの時代ものに出演してきたことで、歴史ドラマの印象も強いキーラ。「たくさんの時代ものに出演してきたのは、私の好みだから」「歴史が大好き。でも実際には、そのキャラクターたちがこれまでオファーを受けてきた中でも面白い役だったからなの」とNew York Timesのインタビューで明かしている。
■自分が自分であるために。ママになった後も仕事熱心
私生活ではモデルのアレクサ・チャンを通じて知り合ったというミュージシャンのジェイムズ・ライトンと2013年に結婚。2015年には長女エディちゃんを出産してママに。そして2019年に次女デライラちゃんを出産した。
2018年、エディちゃんを出産した後の職場復帰についてHarper’s Bazaarで振り返ったキーラ。「わたしがそれをできたのは、育児を頼ることができたから。でもアイデンティティの感覚って多くの女性が揺さぶられていると感じることだと思う。私にとって仕事がアイデンティティを保つ方法だったの」とコメント。次女出産後もわずか6週間で仕事に復帰。「出産後、髪をとかしたのは今日が3度目」と話すなど、子育てに奮闘しながら仕事に励む姿をみせ共感を呼んだ。
■20年間ノンストップ! 実力を兼ね備えて新たなステージへ突入
こうして妻になり、母になり、俳優としても新たなステージを迎えることになったキーラ。映画総合情報サイトIMDbをみると、2001年から2021年まで20年間ノンストップで絶えず俳優活動を継続していることがわかり、いかに女優として人気であるかはもちろん、出産と育児の両立を見事にこなしてきたかもわかる。
2014年にはベネディクト・カンバーバッチ主演の伝記映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」で2度目のアカデミー賞ノミネーションを獲得。2018年には「くるみ割り人形と秘密の王国」でお菓子の国の妖精シュガー・プラムを好演。演じるにあたり、リサーチに加えて独自のアレンジを追加。最も印象的なのはその声だが、子供と公園に行った際に子供たちに試してみたところウケたので採用したのだとか。史実に基づく作品への出演が多いキーラが、こうしたファンタジーで活躍する姿を見るのは新鮮だ。
最近では「オフィシャル・シークレット」や「彼女たちの革命前夜」など近年に実在した人物を演じる作品に積極的に参加。巨匠リドリー・スコット製作で実在の凶悪事件を描く「ボストン・キラー:消えた絞殺魔」も配信。デビューから30年近く経った今もなお第一線で活躍を続け、魅力を増し続けるキーラの活躍から目が離せない。
◆文=KanaKo