片岡義男の小説集『ロンサム・カウボーイ』に触発された佐藤秀明による写真集『LONESOME COWBOY』
片岡義男の小説集『ロンサム・カウボーイ』に触発された佐藤秀明による写真集『LONESOME COWBOY』
佐藤秀明氏による大判の写真集『LONESOME COWBOY』は、1967年から2017年秋までの期間に、アメリカ合衆国で撮影された作品で構成されている。 そこには異国からやってきた佐藤氏自身が「ロンサム・カウボーイ」と […]

佐藤秀明氏による大判の写真集『LONESOME COWBOY』は、1967年から2017年秋までの期間に、アメリカ合衆国で撮影された作品で構成されている。

そこには異国からやってきた佐藤氏自身が「ロンサム・カウボーイ」となって、カメラのファインダーから切り取ったアメリカならではの乾いた風景が広がっている。

『ロンサム・カウボーイ』というタイトルでまとめられた片岡義男氏の短編小説集には、長距離トラックの運転手や巡業する歌手、サーカスの芸人、ハスラーといった男たちが14の物語に登場する。
彼らはおおむね、移動することと仕事が密接な関係を持っていて、「ロンサム・カウボーイ」として生きている。

その舞台となるドライブインやモーテル、コーヒーショップ、バーやサルーン、そして荒野というものを通して写し出された風景からは、時代が変わっても変わることがないアメリカ文化の本質が漂ってくる。

街を出ればこういう道しかない。ずっと次の街まで走るんです。これは50号線という、「アメリカのいちばん寂しい道」と言われている場所。「寂しい」っていうのは車が通らないから、ということではなくて、人里から最も離れている所を走っている道っていう意味。

乾ききった荒野に囲まれて孤独な旅が続くときに、最大の慰めとなったのは30年前にファインダー越しに眺めた風景が、街でも荒野でも今なお残っていたことだった、と佐藤氏は語っている。

次の写真はネバダ州にあるオースチンという小さな町の酒場で、上が30年前、下が現在だが、外見はまったくといっていいほど変わっていない。

次の写真はネバダ州のトノパーの街で、そこは昨年の訪問では第2の目標にしていた場所だった。
いろいろな所で⼩説に名前が出てきたので、⼀度は⾏ってみたいと思っ ていたのだという。

片岡さんの『ロンサム・カウボーイ』に出てくるトノパーっていう所で、ここからいろんな所へ道が通じてる。
この正面にあるホテルはすごく老舗で、今はほとんどゴーストタウンみたいな街なんだけど、昔の格式を保ちながら営業してる。宿代もすごく高いの。僕は泊まらないで2キロぐらい離れたモーテルに泊まったんだけど、今考えたら泊まった方がよかったかなと。

2017年の秋に佐藤氏が帰国して撮影してきた写真のなかから、セレクトした200枚のを次々とスクリーンに映し出して見ていたときのことだった。
片岡氏がキャッチアップ画像にも使われた、砂漠に車が刺さったような写真について訊ねた。
「これは何ですか? アートみたいなものなんですか?」

すると佐藤氏がこう答えたという。

ちょっと外れた所にあった、車の森だね。カー・フォレストっていうんだ。すごいんだ、これが。
廃車にすると、ここへ持ってきちゃわざとこんなふうに埋めるの。埋めたい奴は自分で来て、自分で埋める。

これがネバダ州ゴールドフィルードにある、「カー・フォレスト(車の森)」の入り口だ。

かつてはカウボーイが生きていくためには、馬が相棒であり移動のために必需であった。
その頃からの意識が根底にあるからだろうか、廃車は捨てるものではなく墓場に埋めるものだという考える人もいるのだ。

佐藤氏は1943年6月27日新潟生まれで、日本大学芸術学部写真学科を卒業の後、フリーのカメラマンになった。
そして1967年から3年間はニューヨークに在住した後に、1970年代前半から波を追いかけサーフィン雑誌を中心に活躍した。

その後は北極、アラスカ、チベット、ポリネシアなど辺境を中心に撮影活動を続けて、数多くの作品を発表してきた。

筆者が初めてその存在を知ったのは作詞家の阿久悠氏との共著になる『路地の記憶』(小学館)で、そこには『LONESOME COWBOY』とはまったく異なる、日本の都市における生活者の風景が収められていた。

ニューヨークの摩天楼やユーコン河などの大河の自然から、古き良き時代を思い起こさせる日本的な情緒まで、佐藤氏のフィールドワーク的な作品には驚かされる。
アグレッシヴで行動範囲が広く、今も現役として活躍するフォトグラファーは、日本の「ロンサム・カウボーイ」なのかもしれない。

関連書籍

LONESOME COWBOY
佐藤秀明(著) / ボイジャー

LONESOME COWBOY(立読み版)
https://r.binb.jp/epm/e1_90056_28092018115746/

佐藤秀明 写真集『LONESOME COWBOY』特設ページ
https://kataokayoshio.com/lonesome-cowboy-again

著者プロフィール:佐藤剛

1952年岩手県盛岡市生まれ、宮城県仙台市育ち。明治大学卒業後、音楽業界誌『ミュージック・ラボ』の編集と営業に携わる。
シンコー・ミュージックを経て、プロデューサーとして独立。数多くのアーティストの作品やコンサートをてがける。
「マイ・ラスト・ソング」では構成と演出を担当。
2015年、NPO法人ミュージックソムリエ協会会長。現在は顧問。
著書にはノンフィクション『上を向いて歩こう』(岩波書店、小学館文庫)、『黄昏のビギンの物語』(小学館新書)、『美輪明宏と「ヨイトマケの唄」~天才たちはいかにして出会ったのか』(文藝春秋)、『ウェルカム!ビートルズ』(リットーミュージック)

ウェルカム!ビートルズ 1966年の武道館公演を実現させたビジネスマンたち

著者:佐藤剛
ボイジャー

ビートルズ来日をめぐる人間ドラマを丹念に描く感動のノンフィクション。

1966年のビートルズ来日公演、それは今になってみれば、奇跡的といえるものだった。いったい誰が、どのようにしてビートルズを日本に呼ぶ計画を立てて、それを極秘裏に進めて成功に導いたのだろうか? これは日本の経済復興の象徴だったリーディング・カンパニーの東芝電気と、その小さな子会社として生まれた東芝レコードにまつわる、歌と音楽とビジネスをめぐる物語である。

片岡義男の小説集『ロンサム・カウボーイ』に触発された佐藤秀明による写真集『LONESOME COWBOY』は、【es】エンタメステーションへ。

(更新日:2018年11月23日)

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