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Wallows、色鮮やかなロックアンセムで巻き起こした大合唱の渦 Chilli Beans.とも共演果たした初来日公演レポート

Real Sound

Wallows(写真=Joeseth Carter)

 2月24日、LAを拠点に活動するロックバンド・Wallowsの初来日公演が、恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催された。Wallowsは、2019年にデビューアルバム『Nothing Happens』をリリースした新世代のバンドである。メンバーのディラン・ミネット(Vo/Gt)は、音楽活動と並行する形で俳優としても活動しており、大人気を博しているNetflixオリジナルドラマシリーズ『13の理由』にも出演しているため、そうした活躍を通してWallowsのことを知った人も少なくないと思う。彼らは日本においても大きな支持を集めており、今回ついに、長きにわたるコロナ禍を経て、初めての来日公演が実現する運びとなった。

(関連:Wallows、Chilli Beans.と共演した来日レポ

 この日のオープニングアクトを担ったのは、日本の音楽シーンにおいて大躍進を続けているバンド Chilli Beans.だ。彼女たちは、ギターとベースの骨太なリフを主軸としたカラフルなロックサウンドを通して、満場のフロアに鮮やかなポップフィーリングを届けてくれた。海外のインディーロックファンの心をガッツリと引き込む堂々たるパフォーマンスで、約30分のステージが終わった頃には、すでにフロアの熱気はこの上なく高まり切っていた。

 そしていよいよ、Chilli Beans.から最高のバトンを受け取る形で、ディラン、ブレーデン・ルマスターズ(Vo/Gt)、コール・プレストン(Dr)と、サポートメンバーたちがステージイン。曲が始まる前からフロアから凄まじい歓声が飛び交い、日本のファンの今回の来日公演にかける期待の大きさが伝わってきた。1曲目は、昨年3月にリリースされた2ndアルバム『Tell Me That It’s Over』のオープニングナンバー「Hard to Believe」だ。ドリーミーなシンセポップサウンドと重厚なバンドサウンドが折り重なった楽曲で、その上に重なる歌の甘いメロディがとても美しい。曲が後半に進むにつれて、じっくりと、しかし確実にバンドアンサンブルに熱が漲っていき、そのまま続けて、2ndアルバム冒頭の流れを汲む形で、爽やかな疾走感に溢れる「I Don’t Want to Talk」へ。サビでは、ライブ冒頭とは思えないほど大きなシンガロングが巻き起こり、2番のサビ前では、ディランと観客たちが一緒に「1、2、3、4」とカウントする一幕も。とてつもない一体感だ。また、随所でディランが奏でるハーモニカの音色も、フロアの高揚感を増す上での最高のアクセントになっていた。

 「These Days」では、終盤、ディランがマイクをフロアに託し、観客たちが大部分のパートを見事に合唱してみせた。その後も、『Tell Me That It’s Over』のリード曲であるカラフルに輝くシンセポップ「Especially You」、初期の大ヒット曲「Pleaser」が立て続けに披露されていく。どの楽曲においても、ステージとフロアのコール&レスポンスがばっちり決まっていて、次々とシンガロングも巻き起こった。こうしてライブを観ることで、Wallowsの楽曲が誇るロックアンセム/ポップアンセムとしての爆発力に改めて驚かされたし、観客たちからの愛と期待にめいっぱいに応えていくメンバーたちのポップスターとしての佇まいがとても眩しかった。

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 この日初めてのMCパートで、ブレーデンは、今回は最新作の曲だけではなく、これまでリリースしてきた過去曲たちもどんどんプレイしていくと宣言した。その言葉の通り、この後も新旧の楽曲が次々と畳み掛けられていく。サポートメンバーが奏でるトランペットのファットな響きが折り重なることで、バンドサウンドに新たな厚みと奥行きが加わった「Sun Tan」「Ice Cold Pool」、コールがギター&ボーカルを担い、カジュアルでピースフルなバイブスを届けた「Quarterback」(プレストンが叩くパワフルなドラムのビートも忘れられない)、曲名の通り〈Okay〉の大合唱が轟いた「OK」、そして、こうしたハイライトの連続の前半を締め括ったのは、最新シングル曲「WISH ME LUCK」だ。重厚なトリプルギターサウンドが、憂いを帯びた歌のメロディを優しく包み込みながら深く壮大な景色を描き出していく展開は、息を呑むほどに美しかった。

 ライブは、いよいよ後半戦へ。大ヒット曲「Pictures of Girls」や最新アルバムの楽曲を織り交ぜながらライブが進んでいき、果てしないほどに高揚したフロアの空気を、ブレーデンがメインボーカルを担う楽曲「At the End of the Day」が優しくクールダウンさせていく。このように、ディランとブレーデンのメインボーカルのバトンタッチや、2人の美しいコーラスワークを堪能できるのも、Wallowsのライブの大きな醍醐味であると感じた。

 ディランが、オープニングアクトを務めたChilli Beans.への感謝とリスペクトを表明した後、残り数曲でライブが終わってしまうことが告げられる。フロアからは悲鳴にも似たリアクションが起きていたが、「Scrawny」が始まると、あっという間にフロアはポジティブなバイブスで満たされていった。他の曲も然りではあるのだが、この曲のみんなで歌えるポップアンセムとしての強度に、こうしてライブを観て改めて驚かされた。美しいアルペジオが冴え渡った「Just Like A Movie」、高速BPMでありながらダンサブルなグルーヴを届けてくれた「Remember When」を経て、本編ラストを飾ったのは、最新作のクロージングナンバー「Guitar Romantic Search Adventure」だった。哀愁に満ちたディランの弾き語りから幕を開け、次第に、神秘的で壮大なサウンドスケープが広がっていく。それに応えるように、観客たちがスマホのライトを高く掲げ、フロア一面が白く輝く。とてもドラマチックなフィナーレだった。

 アンコールでは、パンキッシュさとポップさの両方を兼ね備えたメロコアナンバー「I’m Full」で再びフロアを熱狂の彼方へと導き、そして誰もが待望していたであろう屈指のポップアンセム「Are You Bored Yet?」へ。歌い始めから最後まで怒涛の大合唱が巻き起こり、今回のライブは美しい大団円を迎えた。メンバーたちが、ステージを去る途中で何度も何度も観客たちに喜びと感謝の気持ちを伝えていたのが印象的だった。いつか再び実現するであろう2度目の来日公演にも期待したい。(松本侃士)

 
   

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