「部下がいなくなり、上司でいられなくなることが実際起こった。その社員はいま僕と一緒に働いている。その人はたまたま上司がむいてなかっただけ。みんな得意・不得意があるし上司にもあるだろう。がっかりするようなことではなく、できないところはできる誰かにやってもらえばいい。自分ができるところで力を発揮してもらえれば」
制度を導入以降、退職者は減少していて上司の愚痴を言う若手社員も減ったという。田中代表は、上司選択制度のきっかけに関して過去の経験を明かした。
「元々は上司というか“うまがあわない社員”がでたとき、せっかく選んだ仕事・会社をそんなことで退職させたり諦めさせるのが申し訳なかった。僕自身、『こういうことできない。だれかやって、助けて』みたいな“弱み”を自分で言っちゃうタイプだった。(制度を導入して)若いスタッフが、できないことがある上司を助けたりフォローしてくれることが増えて、上司からも『助けて』と言いやすくなったのは良かった。上司の人たちも制度を受け入れてくれていることがありがたいなと思う」
上司選択制度について、『ABEMAヒルズ』に出演したBuzzFeed Japan編集長の神庭亮介氏は、前職の経験とともに次のように解説した。

「興味深い取り組みだが、上司からすると非常に恐ろしい。上司だけでなく部下や同僚の評価も取り入れる“360度評価”をより極端にしたものと言えるかもしれない。僕は前職で新聞社に勤めていたが、入社してすぐに上司に言われたのは『合わない上司や嫌なデスクがいると思うけど、この会社異動多いから。2年もすればいなくなるからさ』ということだった。でも、このシステムがあれば2年を待たずとも上司を変えることができる。部下からすれば非常にありがたいシステムと言えるのではないか」
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「いま、アメリカの若い人の間で“クワイエット・クイッティング(静かな退職)”というものがブームになっている。文句を言わず、必要最低限の仕事だけを淡々とこなす退職者予備軍のことで、問題の根底には、『何を言っても変わらない。理解されない』という会社への諦めと絶望があると思う。上司選択制度は静かな退職を未然に防ぐガス抜きができるのではないか。上司が部下のご機嫌を伺うばかりで言うべきことを言えなくなってしまっては本末転倒だが、うまく運用すれば面白いシステムだ」
(『ABEMAヒルズ』より)