※以降、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。
■これまでの「マンダロリアン」と異なる展開、予想を超えるストーリーに!
寄る辺ないオヤジとかわいすぎる子どもの銀河宇宙を舞台にしたアドベンチャー・ロードムービー。
そんなノリで始まり、絶大な人気を博している「マンダロリアン」。シーズン1、シーズン2と回を重ね、銀河宇宙の隅々を旅をし、様々な人間やエイリアンたちと出会ってきた“寄る辺ないオヤジ”ことディン・ジャリン(ペドロ・パスカル)と“かわいすぎる子ども”ことグローグーなのだが、シーズン3を迎えて、これまでとは異なる展開、予想を超えるストーリーになりそうな予感がしてきてしまった。
第1話からの流れでは、ディン・ジャリンが正しいマンダロリアン、“チルドレン・オブ・ザ・ウォッチ”に復帰するため、マンダロア星の鉱山の泉で沐浴をすることが目標となり、これがシーズン3のメインの大冒険になると思っていた。ところが、それは第2話で意外なほど簡単にクリア。では、残りの6話でなにをするのか?その答えがこの第3話で見えてきたように思うのだ。
というのも今回、マンダロア人のボ=カターン(ケイティー・サッコフ)に助けられ、沐浴を果たしたディン・ジャリンが彼女の船で帰路に着く途中、帝国軍残党のタイ・インターセプターの追撃を受ける(このドッグファイトは大迫力!)。ボ=カターンは身に覚えがあるとはいえ、その敵機の数は多すぎで、しかもボ=カターンの居城まで破壊されてしまう。
もうここで、ファンは「いやな予感がする」状態になる。
さらに驚くことに舞台はコルサントへと移り、モフ=ギデオンのもとでクローンの研究をしていたペン・パーシング博士(オミッド・アブタヒ)が登場する。同じくモフ=ギデオンの冷酷な部下だった女性将校(のちに名前がイライア・ケインと判明/ケイティ・M・オブライアン)も出てきて、新共和国の一員として再教育を受けている。彼らはアムネスティ(恩赦)士官や科学者として数字で呼ばれている。また、パーシング博士が帝国の技術の再利用を提案しても却下され、自分が人生をかけたクローンの研究ももちろん禁止される。私たちが知っているこれまでの新共和国のイメージとは異なる厳しい規制や息苦しさがある。
■今回のサブタイトルに込められた、“新展開”への布石
が、この違和感以上の出来事が起きるのがそのあと。秘密裡にクローン研究を続けるための道具を、廃棄されたスター・デストロイヤー(!)に取りに行ったパーシング博士はケインに裏切られ、新共和国の警察に捕まり緩和装置にかけられる。ケインは新共和国のアムネスティ計画(?)の成功例と賞賛されるが、実はもうひとつ思惑があり、実は帝国の手先だったという二転三転の展開。
これまで、どちらかというとのんびりしていた印象だったシリーズがここにきて新しい顔を見せ始めたと言っていい。しかもそれは、まだまだ力と野心がある帝国の残党の存在と、新共和国のもうひとつのダークな側面にかかわる物語?陰謀や政治が渦巻き、ひと言で言うと規模がでっかくなって行く⁉そして、それにどうディン・ジャリン&グローグー、マンダロリアンたちが絡むのか。
冒頭のマンダロア星の泉で、マンドーは伝説の怪物ミソソーと遭遇しているようなのだが、このミソソーは「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」のなかで新時代を告げる怪物として名前が登場している。
今回のサブタイトル「THE CONVERT(=転向、改宗の意)」にはこの新展開が込められているに違いないように思う。
もうひとつ。「マンダロリアン」の舞台はほぼアウターリムの星ばかりで、コルサントは今回が初めて。しかも、パーシング博士がスピーチをするのは懐かしいギャラクシーズ・オペラ・ハウス。『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(05)で初登場した建物だ。また、パーシング博士とケインが一緒に歩くモニュメント・プラザには、コルサントでもっとも高い山であり、唯一目に出来るという地表、“ウメイトの山頂”が出てくるが、この名前は本作で初めて明らかにされたと思う。
グローグー・ファン的には活躍の場が少なくて残念ではあったが、大きなサプライズがあった。ディン・ジャリンとボ=カターンが「我らの道」といつもの合言葉を言い合っている時、グローグーもそれに加わり、彼なりに同じ言葉を口にする(ように聞こえる)。
ということはつまり、ここでグローグーはマンダロリアンとして生きることを誓ったと考えられるではないか!
やはりこの第3話、あらゆる意味で「転向」のエピソードなのである。
最後にスタッフについて記しておこう。今回の監督は、アメリカで健気に生きる韓国人の移民ファミリーを描きアカデミー賞に多数ノミネートされた『ミナリ』(20)の監督リー・アイザック・チョン。そしてカメラは「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」も担当した「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ等の大ベテラン、ディーン・カンディ。
シリーズのターニングポイントとなるエピソードにふさわしい豪華なスタッフが顔を揃えている。
文/渡辺麻紀