中学生の頃から自分の声について考えるようになって、それまでは自分の声がどちらかと言うと苦手でした。中学生ぐらいから好きになろうと努力していた感じです。自分の声って、普段は頭蓋骨に振動している声を聞いているのと、周辺の声ばかりを聞いているので、実際の声とのギャップで違和感を感じますよね。
―― 登場するキャラクターの中で【ワンコ】は凄く好きなキャラクターでした。
嬉しいです。心震わされますよね。

―― 登場してからキャラクターの印象が、途中から変わり始めますよね。【ワンコ】は周囲に影響を与えるとても重要な役です。演じるのが難しかったのではないかと思いますが。
正直、難しかったです。聞いて頂いているとナチュラルで耳障りの良い映画に聞こえると思いますが、演じている方としては滅茶苦茶テンポが速くて、ずっと早口だったんです。自分の生い立ちについて語る時もあえて早口なので凄く大変でした。アフレコは台本を持ちながら演じるので、あれだけ長いと台本を読んでいるだけになりがちになってしまうのではないかと思って、出来る限り覚えて行こうと思いました。
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1回の収録だったのですが、覚えられるところは覚えながら演じてようやく追いついた感じでした。そうしないと台詞の量的にも追いつけなくて(笑) “声優さんって難しんだな”と強く感じました。

―― これまでの『長ぐつをはいたネコ』シリーズの中で今回の作品が一番人生のテーマみたいなものが紡がれている内容だと思いました。出来上がった作品を観て、どのような印象を持たれましたか。
グッとくるところが多かったです。本国のオリジナル版を観た時の感想や台本を読んだ時の感覚から、吹き替え版で色々なキャラクター性が完成すると、全体像が見えて来て、台本を読んだ時の印象とは随分と変わりました。一番印象が変わったのは【キティ・フワフワーテ】でした。そのキャラクターの背景が見えてきて、【プス】との関係性もしっかりと感じ取れました。そのお陰で、もちろん【プス】も【ワンコ】もとても愛らしいんですが、【キティ】にも感情移入出来ました。何より【ワンコ】には自分が声を入れていながらも感情移入して“壮絶な過去を持っていたんだね”と同情したくなるような感覚になって“あ、俺の声だった”と思いながら聞いていました(笑)。


―― それぞれのキャラクターにほんの少し自分を重ね合わせたりもしました。小関さんはどのキャラクターに近いですか。
自分に近いのは誰か‥‥近いキャラクターは居なかったような気がします。性格が似ていると感じるキャラクターも居なかったですね。でも【ママ・ベアー】にはグッと来ました。人間の娘の【ゴルディ】に対しての口調や包み込んであげる感じが何とも言えなかったです。映画の中で【ママ・ベアー】の過去は描かれていませんが“どんな過去を持っているんだろう?”と考えてしまう役だと思います。
【ゴルディ】は結構ワガママなところがあるのに、人間と熊という血も繋がっていない関係の娘を「それでもいいよ」と【ママ・ベアー】は包み込んであげる優しさを持っている。そんなところが母性とも違う包容力のある凄く素敵なキャラクターだと思いました。
―― 映画の中で【ワンコ】は猫と同化すれば餌をもらえる、可愛がってもらえるのではないかという想いもあって猫の着ぐるみ姿で登場します。ある種、【ワンコ】は仮面をつけて登場するということです。小関さん自身が身に付けたい仮面、“こうなりたい”という憧れの人はいますか。
「猫を被る」と言う言葉もありますよね(笑)、僕はチャラい人になってみたいんです(笑)。
子役時代は特に大人の方々に囲まれながら過ごしていたので、子どもの在り方の正解みたいなものが自分の中にあったんです。「ここは出過ぎちゃいけない」「ここは大人のプライドを傷つけてしまう」とか、そういうことに対して繊細に過ごしていたんです。今思うと“凄く人に気を遣いながら過ごしていた”と感じています。でも当時はそれが普通のことだったので気にもしていなかったのですが、大人への転換期である高校時代や高校を卒業した19歳~21歳頃に、気を遣うことに対して周りから「真面目」と言われるようになったんです。
僕は“居心地よく過ごす為には、これが正解”と思って行動しているのですが、それが「面白くない、真面目だな」と言われて“自分は面白くないのか”と考えるようになって‥‥。でも誰かに「何でやねん」と言うのも相手を傷つけてしまうのではないかと思いながら過ごしていました。今思うと軽やかにいられなかったんだと思います。だから自分の基礎を壊す作業が大変でした。人からの影響も受けないといけない、自分でも悲観視しなくてもいいところに悲観視してしまったりして、自分を否定したり、自信がなくなったりもしました。それらを壊して壊して今があります。だけど「ヨォ~、イエイ!」みたいな感じは自分には合わないとは思っていて(笑)でもそういう自分もスイッチとしてあるならば経験したいという想いはあります。景色とか、自分が普段使わない言葉とか、軽やかさとか、欲しいんですよね。

―― “軽やかさ”を習得するためにどんな克服方法を実行されたのですか。
全然上手くいかなかったんですけど‥‥。夜、サングラスをかけて長財布にチェーンを付けてヘビーメタルを聴きながら溝の口をにらみ歩くチャレンジをしました!ヤンキーチャレンジと自分では言っていますが(笑)。これまで2回、19歳と21歳の時にヤンキーチャレンジをしています。自分らしくない自分になってみようと思って、ゆさゆさと大股で歩きながら、何故かそこでチョイスしたのが今までゆかりのない「溝の口」だったんです。なんか面白かったです(笑)ヤンキーチャレンジをしたことで変わったこともありましたし、気づけたことも色々とありました。
考えてみると価値観も年齢観も変わっていきます。最近は「子どもが生まれた、結婚した」と家族を持つ友人が前にも増して増えました。そんな風に環境も人間関係もドンドンと変わっていくと思いますし、自分もいつかそうなるかもしれない。ドンドンと変わっていく環境にドンドン変わっていく自分とすり合わせていけたら凄く楽しいと思っています。
いつの頃からか顔を合わせると『ハリー・ポッター』話をするようになった小関裕太さんとの関係。そんな小関さんが今回担当した優しい【ワンコ】は、今回の映画の隠れたキーパーソン!いつだってポジティブで、辛いことがあっても、いじめられてもポジティブな考えで生き抜いてきた純度100%の小型犬なのです。だから過去の経験を話す時も、さらりと語ってしまう性格で、そんな【ワンコ】の頑張ってきたワン生(人生)に胸が熱くなってしまう本作は、間違いなく家族でも見て欲しい[友達の作り方]も知る映画なのでした!
取材・文 / 伊藤さとり
写真 / 奥野和彦

愛くるしいモフモフにして、心はワイルドでダンディ、しかも剣を持てば、キレッキレのスゴ腕の、長ぐつをはいたネコ:プス。剣を片手に数々の冒険をし、恋もした。でも、気付いたら、9つあった命は、ラスト1つに。急に怖くなり、レジェンドの看板を下ろして家ネコになることにしたが、「賞金首」であるプスを、刺客たちはほうってはおかない。そんな時、どんな願い事も叶う「願い星」の存在を聞き、再奮起。命のストックを求める旅の道中、プスが出会ったのは、ネコに変装したイヌ・ワンコと、かつて結婚も考えた気まずい元カノ・キティ。プスを狙う賞金稼ぎや、「願い星」の噂を聞きつけた手強い奴らもモチロンやってきて、前途多難な予感しかない。やれやれ、次死んだら、ほんとに終わりなのに。果たして、プスを待ち受ける[うっかり死ねない]大冒険の運命とは!
監督:ジョエル・クロフォード
オリジナル版声の出演:アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック
日本語吹替版キャスト:山本耕史、土屋アンナ、中川翔子、小関裕太、木村昴、津田健次郎
配給:東宝東和、ギャガ
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2023年3月17日全国ロードショー
公式サイト gaga.ne.jp/nagagutsuneko
