英国好みなのか、フランス好みなのかよくわからない。彼女は軽く鼻歌を歌い出す。
「武内のお爺ちゃんはね、あたし、ずいぶん体のこと面倒見てあげているの。健康食品や自然療法を教えてあげたりして。だからあたしの話だと素直に聞くわ。例の胃癌の手術のあとは、案外良好みたいなんだけど、腰が悪いのよ。この間も、前立腺手術したしねえ」
別れた亭主の影響なのか、彼女はよく作務衣を着て現れることがあり、本日も紺色の作務衣スタイルだった。
彼女の小柄でこざっぱりした感じには似合っていたが、もともと色気というものに乏しいせかせかした動作で、おまけにやや外股歩きなので、どことなく男っぽく見える。たとえば、おばさんと少年とを掛け合わせると、こんな珍妙な個性が出来上がりそうである。