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「女郎なんて使い捨て」人道のない男、瘡毒を頑なに治療せず…

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「いいことずくめですよ」

「本当だな。悪いことなど無いな」

「今度は北ですね。元締」

「明日にも治すように話に行ってくるか」

「それがいいですね」

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「そうだ。やるなら早い方がいいから、これから行くかな」

「それもいいですね」

「先生も一緒に行かないか。どうだ。都合が悪いかい」

「治療が終われば、わたしは暇になりますから、いつでもいいですよ」

「それなら付いてきてよ」

「分かりました」

「銀蔵。先生と二人で北に行くから後は頼むよ」

「あの件ですか」

「そうだな」

「行ってらっしゃいやせ」

「ごめんよ」

「これは元締。いらっしゃいませ」

と座敷で探し物をしていた大番頭の幸吉が言った。

「これ! いるかい」

と右の親指を立てた。

「奥にいますよ。呼んできますか」

「いるなら俺が来たことを伝えてよ」

「分かりました」

と中に入って行った。

「旦那様」

「なんだ」

「南の元締が来ましたけど、どうしますか」

「なんの用だって」

「そこまで聞いていないです」

「バカヤロー。連絡に来る時は要件を聞いてこいよ」

「すいません」

「来たんではしょうがねぇ。中に通してくれ」

「はい」

「元締さん。旦那様がお会いになるそうなので、お上がりください」

「ありがとよ」

と二人で奥に行った。勝手知ったる仲だった。が……いつからか? 不仲になっていた。

「勇吉。開けるよ」

「いいよ」

「いきなり来て悪いな。気を悪くしないでくんなぁ」

「それでなんの用だい」

「例の瘡毒の件なんだけどな」

「その話か。北は瘡毒を治さないよ」

「どうしてだい」

「金で買ってきた女郎に、命から二番目に大事なお宝をかけられないからだよ」

「治さないと、客が来なくなるぞ」

「そんな事ねぇよ。現に来ているからな」

「南は治しているから、それをお客が知れば瘡毒を持っている女郎など買いに来なくなるぞ」

「値下げの分は女郎に払わせりゃ済むことだ」

「そんなことしてたら、いつまで経っても年季が明けないぞ」

「そんな事、俺の知った事か。女郎なんてのはなぁ。使い捨てなんだよ」

「それはないだろう」

「女郎の卵など、田舎に買いにいけば野菜より、いくらでも安く買えるよ」

「それでは、人の道にはずれるでしょう」

と洞泉が聞いた。

「女郎に人の道などあるか。俺たちのために働くだけだよ。それで使いものにならなくなったら、捨てれば済む事さ」

「どうしても瘡毒を無くす気にはなりませんか」

「当たり前だ」

「それではお女郎さんが哀れじゃないですか」

「おめぇ~には関係ねぇだろ」

「それもそうですけど……」

「どうせ年季まで生きねぇんだからな。死んだらまた、田舎から連れてきて働かせれば済む事だよ」

「それではまた、瘡毒で死んでしまうじゃないですか」

「だから。ド田舎に行けば野菜と同じく、畑に種を蒔けば土の中から出てくるんだから、それを買いに行けば安く買えるんだよ」

「それじゃあ、あんまりですよ」

「金で売り買いする女郎に、人間の権利などあるか」

「分かった」

「なら、とっとと帰れ」

「いきなり来た俺が悪かった。少し頭を冷やしてから、もう一度考えてくれないか」

「やだね。絶対に瘡毒など治さないからな」

「先生帰りましょぅ」

「そうですね」

「おーい。疫病神と貧乏神のお帰りだ。至る所に塩をバラ撒いておけ」

「てめぇは死神のくせに、どうしようもねぇ奴だ」

と黒鉄屋はそう言い捨てて、南に戻った。

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