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巨額賠償金でFOXニュース存続の危機も 投票システム企業の名誉棄損訴訟

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 2020年にバイデン米大統領が就任してからすでに2年以上が経過し、今になってトランプ氏陣営とその支持者たちが選挙時とその後に行った違法の可能性のあるさまざまな行為がようやく法の裁きを受けようとしている。

 なかでも今アメリカでニュースを賑わせているのが、投票システムテクノロジー企業ドミニオン・ボーティング・システムズ社が、トランプ氏を支持した保守系FOXニュースを訴えた大規模な民事訴訟だ。これは2021年にドミニオンがFOXニュースに名誉棄損の賠償金として16億ドル(約2150億円)を請求した訴訟で、2年経った今ようやくその裁判が開始されようとしている。

◆「言論の自由」か「悪意ある名誉棄損」か
 FOXニュースが訴えられた理由は、2020年の大統領選挙でトランプ氏が敗北した際に、「ドミニオンの投票機器がバイデン大統領側に有利に働き、選挙が盗まれた」というトランプ陣営の虚偽の主張を繰り返し放送したためだ。ちなみにドミニオンのほかにも同じ投票システムテクノロジー企業のスマートマティック社がFOXニュースを27億ドル(約3600億円)の賠償金を請求する訴えを起こしている。両方の裁判の結果によっては、FOXニュースが巨額の賠償金を支払う可能性もあり、保守派の砦ともいえる同局の経営と、そのトップに立つルパート・マードック氏のメディア支配が傾く可能性も十分にある。

 CNNによると、FOXニュース側は憲法で保障された「言論の自由」をドミニオンが攻撃していると主張している。一方ドミニオンにとっては、FOXニュースが証拠も提示せずに公共の電波上で虚偽情報を流したことで、同社が多大な損害を被ったことは明らかである。この裁判ではどこまでが言論の自由であり、どこからが悪意ある名誉棄損となるのかが争われる。

 そしてその争点になっているのは、FOX側がどこまでこれを虚偽と知りながら主張していたかである。米公共ラジオ(NPR)によると、1964年の米最高裁判決を前例とするためには、ドミニオンはFOXが実際に悪意を持って虚偽情報を流していたことを証明する必要があるという。そこで焦点が当たっているのがルパート・マードック氏の言動である。NPRの別の報道によると、マードック氏はFOX自体はトランプ陣営による「選挙は盗まれた」という嘘を支持していなかったものの、同局の番組司会者であるマリア・バルティロモ氏やルー・ドブス氏、ジニーン・ピロ氏、ショーン・ハニティ氏らが番組の中でそれを支持した、と証言した。マードック氏は、虚偽の主張を放送したのはFOXニュース自体の責任ではなく、ニュース司会者自身の選択だった、と主張して責任逃れをしたいのかもしれない。

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◆FOX司会者「トランプが大嫌い」
 またドミニオン側はFOXニュース番組司会者が表ではトランプ氏を支持する傍ら、裏では悪口を言っていたことも暴露している。NBCニュースによると、同局で最も人気がある番組の司会者であるタッカー・カールソン氏が「あと本当に少しで、(番組が)ほとんどの夜はトランプを無視できる状態に近づいている」「トランプが情熱的に大嫌いだ、もうこれ以上我慢できない」と他者に送ったメッセージも暴露された。またABCニュースによると、同局の別の司会者であるローラ・イングラハム氏も、トランプ氏の弁護士を務めたシドニー・パウエル氏について「完全に狂っている」などと発言していたことも明るみに出ている。テレビで虚偽の主張をしていても、実際のところはFOXニュース司会者たちの大多数も、ごく普通の判断力や良心を持ち合わせた人々なのだろう。このような言動の事実から、FOXニュースが虚偽だと知っている情報を故意に流していたことは想像できる。

 この裁判は4月27日に開始される予定で、5月末頃まで続くといわれている。裁判の結果次第では、FOXニュースは今後の放送の仕方や、存在のあり方さえも考え直さなければならなくなるだろう。

 
   

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