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日本人が知らない〈EUの加盟国〉の実態…ルクセンブルク、人口が少ないのに「1人当たりGDP」がぶっちぎりで高いワケ

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東欧諸国では、経済成長に伴って1人当たりGDPが上昇している。これをキャッチアップという。その一方で、ギリシャ(EL)、スペイン(ES)、イタリア(IT)、キプロス(CY)などの南欧諸国では、1人当たりGDPが大きく減少している。この背景にはGDPが十分に伸びていないことがあり、ギリシャやイタリアなどは投資不足に悩まされている。

アイルランド(IE)の1人当たりGDPはこの間に60上昇しているが、このうち約40の上昇は2015年にGDPの計算方法を変えたことによる。

2010年代のヨーロッパ経済の動向

2008年の金融危機によりヨーロッパ経済は不況に陥り、2009年にはGDPが大幅なマイナスを記録した(図表4、黒の太線)。その後、ヨーロッパではギリシャ債務危機が発生し、2012年にもマイナス成長を記録した。2013年からは経済の回復期に入ったが加盟国によるばらつきが大きく、特にギリシャ(EL)は回復までに長い時間がかかった。直近のピークは2017年で、2019年には多くの加盟国で成長の鈍化がみられ、2020年は感染症による経済封鎖によりGDPは大幅なマイナスを記録し、2020年代は経済の回復が課題となる。

[図表4]GDP成長率(%) 注:背景の黄色の部分は、EU加盟国(イギリスも含む)の最大値と最小値を表す。

南欧諸国は投資不足に苦しんだ(図表5)。ドイツ(DE)などの主要国や北欧諸国では投資の回復は早かったが、スペイン(ES)は2018年にようやく2009年の水準を回復し、ギリシャ(EL)は2009年の約半分の水準で推移している。

[図表5]投資額の推移(2009年=100)注:GDP項目の投資(総固定資本形成)の推移。

EUでは道路や水路などの交通網の整備に力を入れており、2014年にはEUの資金を呼び水にして民間資金を投資に振り向ける欧州戦略投資基金(European Fund forStrategic Investments)が創られた※。

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※ 欧州戦略投資基金を含めた14の基金は、2021年からInvestEUというプログラムに統合され、2027年までの期間に6500億ユーロの投資を行う予定となっている。

2019年10月までに4390億ユーロの投資が行われたものの、EUの政策だけでは南欧や東欧の投資不足が解消されておらず、これらの地域では中国の一帯一路戦略による投資を受け入れている。中国の投資に対しては期待がある一方で、中国の影響力が増すことへの懸念もある。

投資によって作られたインフラ(道路などの経済活動の基盤となるもの)や知的財産は長期にわたって利用できることから、長期的な経済成長を考慮したうえで投資分野を決める必要がある。EUは環境分野への投資を優先させており、グリーンディールと呼んでいる。

川野祐司
東洋大学 経済学部国際経済学科 教授

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