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『どうする家康』出演中の波岡一喜 苦悩を救った親友・上地雄輔の言葉「二番の俳優って大切」

SmartFLASH

「焼きが食べられる店はなかなかないんですけど、ヘルシーでいいんですよ。網にのせて焼いているときのこの香りがいいでしょ。タンパク質が多いし、健康になってる感じがするんです」

 

 ふぐといえばヒレ酒だが……。

 

「お酒はめっちゃ飲むんですけど、日本酒は翌日残るのでふだんはやめてます。麦焼酎のお茶割りが定番です(笑)」

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 強面のイメージが強い波岡だが、幼稚園までは気弱。途中で登園拒否になり、最後まで通わなかったという。それが小学校入学前に幼馴染みから「第一声で大きな声を出せ」など、強くなるコツを教わって変わった。ついには「体も大きかったので嫌われるぐらい強かったです」とちょっとしたガキ大将に。小学5年生のとき、やんちゃ盛りの波岡に「俳優になりたい」という思いが突然、芽吹く。

 

「初めて観たドラマが『東京ラブストーリー』(1991年、フジテレビ)で、これがすごくおもしろかったんです。なんとなく人前に出たいという気持ちもあったので、楽しそうなテレビの世界へ行ってみたいと漠然と思いました」

 

 高校入学と同時に俳優養成学校にも所属。演技の勉強をしながら現場に行ったりもしていたが、「東京に行かないと俳優にはなれない」と耳にする。

 

 母親に気持ちを伝えると、母親が出した条件は大学に行くことだった。

 

「それまで遊び呆けてまったく勉強をしていなかったので、浪人して予備校の寮に入って、1年間だけみっちり勉強しました。毎日10時間勉強したらどんどん成績も上がって。早稲田大学と一橋大学に合格したんですが、俳優になるならと、早稲田へ進みました」

 

 入学後、厳しいことで有名な演劇研究会に入会。その後は憧れの存在だった松田優作の足跡を追って文学座に入る。それぞれ1年ほど経験を積み、自分で探した現在の事務所に入ったのが24歳のときだ。

 

「初めての映像の仕事が木村拓哉さん主演のドラマ『プライド』(2004年、フジテレビ)でした。数字を取った最高峰のドラマの現場を経験させてもらって、映像の現場はこういうことかって。そのころに映画『パッチギ!』のオーディションを受けて、地獄のシゴキのある “井筒学校” に飛び込ませてもらいました」

 

 芝居とは何か、舞台とテレビとはどう違うのか、台本をどう読むべきなのかーー。

 

「16歳から芝居をしてきたつもりでいたのに、25歳で何もできないのかと。芝居のイロハを、井筒(和幸)監督に教えていただきました。山ほど叩き込まれたなかでも『手ぶらで来るな』『ト書きを読め』は今でも実践しています。要は台本を読むだけではなく、自分でちゃんと考えて来いと。ト書きにこそ意味があるんだと。当時は井筒監督が半径5m以内に来ると警報が鳴るぐらいでしたけど、今は本当に恩人だと感謝しています」

 

波岡一喜

 

 作品にも人にも恵まれたという波岡が、興味深い表現で話してくれた。

 

「俳優は『作品』というくじを毎回買って参加しているんです。僕が初めて引いた映画のくじが『パッチギ!』という大当たりのくじだった。作品が評価されると多くの人の目に留まって、僕の俳優としてのスタートラインは一気に上がりました。たまにすごいくじを引くためには、エントリーし続けないといけない。すごい本数の作品に出させていただいているのはエントリーさせてもらえてるから。ありがたいなと思っています」

 

 いいスタートでも、その状態を保ち、さらに “上” へ行ける俳優はひと握りだ。壁にぶつかった波岡は、上を目指し、オーディションを受け続けた。

 

「32歳ぐらいのときに本気でやめようと思ったことがあります。俳優として0から1、1から2に上がっていきたいはずなのに、(次の作品では)2から1に落ちたりする。自分はエースで四番の俳優になりたいのに、なんでいつも二番なんだって。届かない感じが我慢できなくなったんですね」

 

 そんなとき、波岡の気持ちを救ったのが親友である上地雄輔の言葉だった。

 

「『一喜が今やってる役を、何人の俳優がやりたいと思ってると思う? それをお前はやれているのにやめようって考えるなんてアホだよ』って言われて。そのとおりだなって思いました。ドラマや映画で役者全員が四番じゃ成り立たない。バントヒットで繋いでいく二番のような役者も必要なんです。雄輔の言葉で “二番” を続けることの大切さに気づいたというか。その日は潰れるまで飲みました」

 

 波岡が「芝居の猛者が揃っている」と話すのが、現在出演しているNHK大河ドラマ『どうする家康』だ。徳川家家臣の本多忠真を演じているが、家臣団の結束が固く非常にいい現場だと話す。

 

「みんなが松本潤くんを公私で支えたいという共通認識があって、めちゃくちゃいいチームです。撮影中もどんなふうに布陣したらいいかと瞬時に察知できる天才が揃ってるから、すぐに進むんです。まだクランクアップしてないのに、『毎年集まろう』なんて話をするぐらい仲がいいです」

 

 2021年放送の大河ドラマ『青天を衝け』で演じた、作品の脇を固める寡黙な武士・川村恵十郎役では「時折見せる笑顔がステキ」とSNSなどで話題になった。

 

「豪快な役が多いので、あの役はよかったですね。今出演している大河にも繋がったと思ってます」

 

 そして、4月放送のドラマ『稲妻ムービーマーケット』(サンテレビ)では四番打者、主演を担う。

 

「あるものを手を抜かずにちゃんとやること。これを大事にしてきたからかな。二番でもたまには四番を打たせてもらえるので、やっぱり俳優はやめられない」

 いい色に焼けたふぐを頬張る波岡は、優しい顔をしていた。

 

なみおかかずき
1978年8月2日生まれ 大阪府出身 ドラマ『プライド』(2004年、フジテレビ)でデビュー。映画『パッチギ!』(2005年)、『クローズZERO』(2007年)で注目され、多くの映画やドラマで活躍。配信ドラマ『火花』(2016年、Netflix)では主演を務め、NHK大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)でも話題に。現在、NHK大河ドラマ『どうする家康』で本多忠真を熱演中。ドラマ『稲妻ムービーマーケット』(4月3日スタート、月曜23:30〜、サンテレビ)では主演を務める。舞台『幾つの大罪~How many sins are there?~』(4月~5月まで東京ほかにて公演)に出演

 

【しゃぶ焼 ふくのや】
住所/東京都渋谷区恵比寿南1-8-9 京城ビル4階 
営業時間/18:00〜23:00(L.O.フード22:00、ドリンク22:30) 
定休日/日曜、祝日

写真・野澤亘伸

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