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表現者だからこそ知っている、困難へのアプローチ方法とメンタリティの高め方

パラサポWEB

困難に直面したときこそ、自身を成長させるチャンスとして努力を重ねてきたパラアスリートたちのエピソードは、人生を輝かせるためのノウハウやヒントにあふれている。

2016年のスタートから2021年までに25ヵ国40組もの世界最高峰のパラアスリートに迫り、彼らのストーリーを描いてきたのが、WOWOWと国際パラリンピック委員会(IPC)の共同プロジェクトのドキュメンタリー「WHO I AMシリーズ」だ。

世界中の多様な個性と、彼らが放つ「これが自分だ!」という輝きを描き、国内外でも多くの受賞を果たしてきたが、今年にはこれまでのパラアスリートに迫る継続シリーズ「WHO I AM パラリンピック」に加え、アーティストやクリエイターたちの素顔に迫る「WHO I AM LIFE」という新シリーズをラインナップし、次のステージへと進化を遂げている。

そこで今回は、パワーアップした「WHO I AM」プロジェクトが描く未来像を探るべく、チーフプロデューサーを務める太田慎也さんに取材を敢行。シリーズ誕生の経緯やプロジェクトにかける想い、取材を通して見出したパラアスリートたちの輝きの根源や新シリーズが目指す世界観などについて話を伺った。

WOWOWのフィロソフィーと合致した、パラリンピックがもつ可能性と挑戦の精神

これまでと同様に、世界最高峰のパラアスリートに迫る「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM パラリンピック」と、アーティストやクリエイターなど、スポーツの枠を超えた多様なラインナップで贈る「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE」の2ラインでチーフプロデューサーを務める太田慎也さん

そもそものきっかけは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の招致活動が大詰めを迎えていた2013年。もしも東京での開催が決定したら、放送事業者であるWOWOWは、どのような魅力を発信し、どのように大会に貢献するべきだろうかという根本的な問いについて議論したことから始まっている。

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「視聴率を最優先する地上波ではなく、有料放送のWOWOWだからこそ見出せる目的や意義を模索していくなかでたどり着いたのが、パラリンピックでした。なぜなら、パラリンピックには人の心のバリアを打ち破って人と人をつなげ、既存の価値観を変える力があると考えたからです。WOWOWも『エンターテイメントを通じて新たな価値を創造し、人々の幸福と豊かな文化の創造に貢献したい』という理念を掲げていますから、会社が大切にするフィロソフィーとも合致すると考えたんです」(太田さん)

そうしたなかで、世界トップレベルのパラアスリートと向き合うドキュメンタリー番組を制作しようという企画案に行き着いたのは、自然な流れだったという。ドキュメンタリーの制作を得意とし、ハリウッド映画からヨーロッパのサッカー中継まで、世界最高峰のエンターテインメントを取り揃えるWOWOWがパラリンピックをテーマに据えるのであれば、世界最高峰のパラアスリートたちが世界最高の舞台であるパラリンピックに挑む勇姿を描くスポーツドキュメンタリーが絶対に面白いという意見で一致したそうだ。

とはいえ、自身が制作を指揮するチーフプロデューサーに任命されたときには、本当に魅力的な番組を作れるのか不安もあったと太田さんは語る。「当時は『D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)』や『SDGs』といった言葉もまだ浸透しておらず、現在のようにパラスポーツの情報が世の中に行き届いている状況ではありませんでした。こんなことを言うと関係者の方々にお叱りを受けてしまうかもしれませんが、当時の日本のパラスポーツの競技大会を観戦しても、これまでの仕事で触れてきた超一流のスポーツの世界大会と比べると、どうしても見劣りしてしまうところがあり、盛り上がれない自分がいたんです。でも今思うと、パラアスリートの本当のすごさやパラスポーツの奥深さを理解できておらず、ただただ無知なだけだったんです」とプロジェクトが始動したばかりの頃を振り返る。

取材を重ねて見えてきた、「パラリンピアンを自分らしく生きる人たち」と描く新しい切り口

太田さんのパラリンピアンへの価値観を大きく変えた、“競泳界の金メダルコレクター”の異名をもつダニエル・ディアス選手。「WHO I AM」シーズン1の1話目に登場する

そんな太田さんの考えが一新されたのは、2015年のパラ水泳世界選手権を取材したときだ。各国の代表ジャージをまとった選手たちが、世界一を賭けてハイレベルなパフォーマンスを披露する姿に圧倒され、活気あふれる音楽と熱狂的なMCのもとで観客と一体となったイベントの盛り上がりにも心を揺さぶられたという。

「なかでも、パラリンピックで多数のメダルを獲得し、翌年のリオ2016パラリンピックでも金メダルが期待されていたダニエル・ディアス選手はオーラが違いました。ブラジルの国旗があしらわれたスタイリッシュな義足をつけて記者会見の場に颯爽と登場すると、記者たちが彼を一斉に取り囲みました。その受け答えや振る舞いはとにかくカッコ良く、これぞスーパースターという風格でした」(太田さん)

この取材を通して気づかされたのは、目が見えない、足がないといった障がいの“意識”は自分たちの方にあるということだったという。「彼らはスーパースターで、自分たちより何万倍も人生を楽しんでいる。『かわいそうな人たちだから応援してあげなきゃ』という気持ちで会場を訪れた自分はなんだったんだろうって。無意識のうちに上から目線でいた自分が小さいヤツに思えて、自分自身について深く考えさせられました」と、太田さんはそのときに受けた感銘を振り返る。

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