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有害コンテンツを「おすすめ」するSNSの責任は? 米最高裁がグーグル訴訟を審理

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 アメリカの「ゴンザレス対グーグル」訴訟で、ユーチューブ上で拡散されたテロ組織の有害な動画に関して、グーグル社の責任が問われている。これまで通信品位法第230条(Section 230)によってインターネット企業の免責が担保されてきたが、今後はどうなるか。

◆「ゴンザレス対グーグル訴訟」とは
 ゴンザレス対グーグル(Gonzalez v. Google LLC)は、現在米連邦最高裁で審理されている訴訟。2015年に発生したパリ同時多発テロで、当時アメリカから留学していて被害者となったノエミ・ゴンザレス(Nohemi Gonzalez)の家族が、イスラム国(IS)の勧誘ビデオ動画を拡散させたユーチューブにもテロ発生と犠牲者をもたらした責任があるとし、親会社のグーグルに対して訴訟を起こしている。ユーチューブの、ユーザーに対して「おすすめ動画」を提案するという仕組みに関しては、ある意味、ユーチューブ自身が発信しているものであり、同社に責任があるというのがゴンザレス側の主張だ。

 議題の概要は、インターネットプラットフォームの提供者が、ユーザー発信のコンテンツをキュレーションして提案した場合において、アメリカの通信品位法(Communications Decency Act)第230条(通称:セクション230、1996年電気通信法の第509条)において免責されるかどうかというものだ。セクション230は、インターネットが普及し始めた90年代、ポルノグラフィーなど、特に子供にとって不適切なコンテンツの自主規制を促す目的で提案された法案で、この法案によって、インターネット上のプラットフォームは、出版社や表現者として扱われることなく、コンテンツの内容および措置に関しての民事責任から免れてきた(詳細は参照)。

◆最高裁における議論にネット界が注目
 2月、同様のタイミングで、2017年に発生したイスラム国による別のテロの被害者の家族が起こした「ツイッター対タムネ(Twitter, Inc. v. Taamneh)」の審議も行われていた。そのため、最高裁の判断に注目が集まった。最高裁の判決によってゴンザレス側が勝訴となれば、アルゴリズムを使ってユーザーに対し特定の情報をキュレーションして提供するすべてのインターネット企業に影響が及ぶ。

 2月21日の議論では、アルゴリズムがニュートラルかどうかという点が一つの争点となった。コンテンツ内容が料理であろうがテロであろうが、アルゴリズムが平等・ニュートラルであれば、プラットフォーム企業に対してはセクション230の免責が適応されるのではないかという裁判官の問いに対し、ゴンザレス側はアルゴリズムがニュートラルであっても内容が有害であれば、その限りではないと主張。

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 他方、グーグル側はアルゴリズムがたとえニュートラルではなくても、インターネット企業にはセクション230の免責が適応されると主張。現行のセクション230が存在しないと仮定した場合、インターネット上は有害なコンテンツで溢れるか、限りなく自己検閲された新聞のようなものになるとし、インターネットは今我々が知る(そして気に入っている)さまざまな情報があふれる世界とはまったく異なるものになると訴えた。

 お互いの主張の落ち合う場所はなく、審議はまだ続いている状況だ。審議の途中、裁判官の一人、エレナ・ケイガン(Elena Kagan)が、「(自分たち)9人は、決してインターネットの偉大な専門家ではない」と発言し、苦笑を誘う場面もあった

 最高裁における審議での結論が出なかったこと、そして今後も結論は出せないと思われる状況は、多くのインターネット企業にとってはよい結果となったかもしれない。しかしながら、デジタル世界におけるコンテンツが、リアルな世界でのさまざまな危害につながるという事実がある。その規制に関する議論は今後も継続され、ますます注目されるものとなるだろう。

 
   

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