top_line

みんなで応援しよう!「ラグビーW杯」最新ニュースはコチラ

代理戦争化するウクライナ戦争 中国の接近・関与も顕著に

NewSphere


 ウクライナ侵攻から1年が過ぎるなか、依然として事態の打開策は一向に見えない。米国防総省のコリン・カール次官は2月末、ロシア軍が短期間のうちに支配領域を大きく拡大する可能性は極めて低いとの見解を示した。ウクライナ軍は冬が明けた春にかけて大規模な攻勢を仕掛けるとみられ、今後戦闘が激化することが予想される。ウクライナは、2014年にロシアに占領されたクリミア奪還までを想定して戦闘を継続しているが、ロシアのプーチン大統領にとってクリミアは核心的利益になっており、双方の争いの長期化は避けられない。

◆アメリカを強く意識するプーチン
 一方、侵攻から1年が過ぎ、ウクライナを取り巻く戦略環境は以前と違う様相を呈している。違う様相とは一言で言えばウクライナの代理戦争化だ。侵攻1年となる直前の2月21日、プーチン大統領はロシア国民向けに一般教書演説を行い、米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止し、アメリカの対応次第では核戦力を強化する方針を明らかにした。そして、1週間後の28日、プーチン大統領は新STARTの義務履行をロシアが一時停止すると定めた法律に署名し、即日発効された。プーチン大統領は演説でウクライナでの戦闘を継続すると強調したが、客観的にはウクライナへの軍事支援を続けるアメリカを強く意識したものになったと捉えられる。

 また、その武器供与の中身もより代理戦争化してきている。アメリカなど欧米諸国はこれまで対空ミサイル「スティンガー」や対戦車ミサイル「ジャベリン」、戦略無人機など武器や兵器を供与してきたが、今日までにアメリカやドイツ、イギリスなどは最新鋭の戦車を供与することを決定し、ウクライナに渡る戦車の総数は300を超える。そして、米国防総省は2月末、戦闘機の供与には1年半かかるとし、現時点で供与は現実的ではないとの意向を示したが、米戦闘機がロシア陸軍を攻撃するとなれば、米ロの代理戦争化はより色濃くなるだろう。

◆ウクライナ情勢への中国の関与
 そして、代理戦争化に絡むアクターは米ロだけではない。ここに来て中国の関与も色濃くなってきた。バイデン政権のサリバン大統領補佐官は2月26日、中国によるロシアへの武器供与について言及し、中国は依然として武器供与を検討対象から外しておらず、仮に供与すれば大きな過ちであると警戒感を示した。また、ブリンケン国務長官も同月18日、中国はこれまでロシアに殺傷力のない装備を送ってきたが、殺傷兵器の提供を検討しているとの情報があると明らかにした。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長も同月24日、中国がロシアに武器支援を検討している兆候を確認したとして、中国に自制を呼びかけた。

 一方、中国外務省は2月24日、主権と領土の一体性の尊重や停戦の実現、和平交渉の開始、また核兵器使用や原子力発電所への攻撃に反対する立場などを盛り込んだ12項目からなる和平案を発表した。これについて、和平案には大前提としてのロシア軍の撤退が明記されておらず、結果としてロシアによる侵攻を正当化することになるなど欧米から批判の声が上がっている。また、習国家主席は3月1日、北京を訪問したベラルーシのルカシェンコ大統領と会談し、欧米によるロシア制裁に反対する立場を示し、政治や経済など多分野で協力を促進していくことで一致した。ルカシェンコ大統領はリトルプーチンとも呼ばれ、実質ロシアの弟的存在になっている。ルカシェンコ大統領の訪問の背後にプーチン大統領の意向があるかはわからないが、双方にはウクライナ情勢への中国の関与を望む思惑があることは間違いないだろう。このように、最近のウクライナ情勢は米ロだけでなく、中国の接近・関与も顕著に見られるようになっている。

 
   

ランキング

ジャンル