シリーズ「パラスポーツと教育」では、パラスポーツ・パラアスリートからの学びが子どもたちに何をもたらすのか、さまざまな風景から迫ります。
第3回は、東京都の小学校で行われたパラスポーツ運動会を取材。パラスポーツを夢中になって楽しむからこそ得られる学びはどんなものでしょうか。子どもたちの様子から、心に深く刻まれた「気づき」を見つめます。
卒業間近、5・6年生の交流行事として運動会を実施

1月下旬のある日、杉並区立済美小学校にてパラスポーツを種目とした運動会「あすチャレ!運動会」が実施されました。
杉並区立済美小学校は、東京大会の開催までオリンピック・パラリンピック教育を積極的に取り入れ、子どもたちの学びに活かしてきた学校です。特にパラスポーツを取り入れた活動もたくさん実施し、過去にはパラアスリートによる特別授業や、今回の「あすチャレ!運動会」の系列プログラムである出前授業「あすチャレ!スクール」「あすチャレ!ジュニアアカデミー」も開催した経験があります。学校主体の取り組みとしてはパラリンピック特有の競技であるボッチャをメインにしており、体育館にはボッチャコートを設置。校内でトーナメント大会も開催されています。休み時間には1年生から6年生までで交じり合ってボッチャに取り組むなど、現在もパラスポーツが学校の教育活動に根付いています。
そんな済美小学校が今回「あすチャレ!運動会」を実施したのは、パラスポーツをみんなで体験することはもちろん、新型コロナウィルス感染拡大によって失ってしまった、学年間の交流を深める機会をつくる、という大切な目的があったからだそう。特に6年生の卒業を間近に控え、学校のリーダーシップを受け継ぐという意味でも高学年である5年生と6年生の絆を深めたかったと言います。
そうした先生方の願いのもと、通常学級と特別支援学級の5年生・6年生、合計約100名の児童が体育館に集まり、あすチャレ!運動会はスタートしました。
学年を越えて入り交じり、コミュニケーションをとる姿

運動会の最初のメニューは、少し変わったアイスブレイク。ナビゲーターのブッキーさんが、「ラーメン、うどん、そば、スパゲッティ。声を出さずに自分の好きなものを伝え、同じものが好きな人同士でグループをつくろう!」と呼びかけます。

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5年生も6年生も入り交じりながら、どうやったら伝わるのか、相手の側に立って様々な方法を試します。身振り手振りを使ったり、相手の手のひらに文字を書いたりと、一生懸命。受け手側もしっかり相手の目を見て、自分に何を伝えようとしているのかを集中して感じ取ろうとする姿が見られます。お互いの工夫によって、子どもたちは声を出さなくてもしっかり伝え合うことができました。
ある方法が使えないならば、ほかにどんな方法があるかを考えて工夫すること。相手の立場を想像して考えること。それはパラスポーツの根底にある重要な考え方でもあり、共生社会の実現につながる大切なポイントでもあります。新しい気づきを得て、普通の運動会とはひと味違った心持ちで競技に臨みます。
パラスポーツ運動会に込められた3つのメッセージ
いよいよパラスポーツに挑戦。今回の運動会では、シッティングバレーボール、車いすポートボール、車いすリレーの3競技に挑戦。子どもたちが考えたというユニークなチーム名を掲げて、8つのチームに分かれて競います。競技に取り組む前に、ブッキーさんが「あすチャレ!運動会」を通して感じてほしいと子どもたちに伝えたのが、次の3つのメッセージです。
・パラスポーツの楽しさに気づくこと
・自分の可能性に気づくこと
・友達のいいところに気づくこと
今回のパラスポーツ3競技をやってみるのは初めての児童がほとんどという中で、みんなで一生懸命プレーをし、友達の応援をすることでどんな変化が生まれていくのか、これから過ごす時間に期待が高まります。
風船を使ったシッティングバレーボール
最初の競技はシッティングバレーボール。パラリンピックでも実施されている競技で、サーブ、ブロック、スパイクなどの際に床にお尻をつけたままプレーします。
