
スウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥンベリらが、風力発電所に対して抗議活動を行った。グリーンエネルギーを推進する活動家らの訴えとは。
◆ノルウェー首都オスロでの抗議
環境活動家のトゥンベリを含む活動家らが2月27日、ノルウェー・オスロの環境省の入り口を占拠し、抗議活動を実施。抗議の内容は、先住民サーミの生活拠点に建設された風力タービンに反対するものだ。サーミは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドおよびロシアにかけての広い地域に暮らしている人々で、漁業やトナカイの放牧で生活することで知られている。サーミがトナカイを放牧してきた地域に風力タービンが設置されたことで、その見た目と騒音にトナカイが怖がり、伝統の暮らしが侵害されていると彼らは主張する。
環境活動家のトゥンベリは、ロイター通信の取材に対し、地球環境保護や気候変動対策は、先住民の権利や人権保護とともに進められるべきものであり、一部の人を犠牲にしたやり方は正しいやり方ではないと主張。トゥンベリを含む活動家らは抗議活動を続けたが、3月1日には警察によって一時拘束された。
◆「違法」とされた風力タービン
ノルウェーの最高裁判所は2021年10月、風力タービンの建設は国連の条約によって保護されているサーミ文化の権利を侵害するものであり、環境省によるライセンス契約は無効であるという判断を下した。しかし、この決定によって風力タービンが撤去されることはなく、判断から500日以上経った現在も風力発電所は稼働している状況だ。
背景にはノルウェーのエネルギー政策のシフトがある。ノルウェーは世界第11位の産油国だが、グリーンエネルギー化に向けて、投資を拡大してきた。風力発電の稼働能力は2018年の3倍、4.8ギガワットまで拡大したが、石油に比べて多くの土地が必要となる。 サーミが生活するノルウェー西部のフォセン地方には151基の風力タービンが設置されている。151基を運営するのはノルウェーの発電所2社だが、同社の所有者にはノルウェー、ドイツ、スイスのインフラ会社が名を連ねている。
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違法とされた風力タービンだが、環境省はいまだ具体的な対応方法を決定していないようで、サーミ側との折り合いもついていない。環境省はいくつかの風力タービンや道路の撤去といった対応を検討しているようだが、サーミ側は風力タービン撤去を主張。最高裁の判断から500日以上経過しているが、話し合いは難航しているようだ。先住民の土地や権利を無視した気候変動対策を、「グリーン・コロニアリズム(緑の植民地主義)」だとする主張もある。さらには、先住民の存在が、環境保護の名目に都合よく使われることがある一方で、実際には権利を侵害するというやり方に対しての批判の声もある。
見せかけだけの環境保護・気候変動対策としてのグリーンウォッシュにも注意すべきだが、環境投資や環境ビジネス推進の背後にあるかもしれない「グリーン・コロニアリズム」も、無視してはならない視点だ。