出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:「このあと、家に行っちゃう…?」デートで、女性の家近くのエリアを設定する男の本当の目的は…
湊は私のことを、どう思っていたのだろうか。顔立ちが整っていて、学生時代はよくカットモデルをしていたという湊。
最初は、私の一目惚れだった。
彼に気に入られたくていろいろと頑張っていたし、湊の気持ちも私に傾いていたと思う。なぜなら、彼が連れて行ってくれるのは毎回予約困難な名店や高級店ばかり。
私にかなりの金額を使ってくれていた。
でも私たちは、何もせずに終わってしまった。正確に言うと、何も求められずに終わってしまった。
「真緒ちゃんには、僕よりもっといい人がいると思う」
そんな残酷な言葉を言われたのが、最後だった。
Q1:女として“フル装備”ではない状態での初対面。男が女に抱いた印象は?
湊と出会ったのは、男友達が「今、中目黒でイケメンと飲んでいるから、真緒もおいでよ」と誘ってくれたのがキッカケだった。
― イケメンか…。まぁとりあえず行こうかな。
そんな軽い気持ちで、友人からリンクが送られてきたバーへ向かう。そして湊を見た途端、私は激しく後悔した。
なぜなら連絡が来た時、私はたまたまジムにいて、その後だったのでかなり適当な服装で来てしまったのだ。化粧も軽くしかしていないし、髪も巻いていない。
でもバーにいた湊は想像以上のイケメンで、万全な状態じゃない自分に若干の怒りさえ湧いてきた。
「真緒、こちら湊。イケメンでしょ?」
友達からそう紹介され、私はただうなずくしかできない。
「うん…かなりの。私ジム帰りで、こんな適当な服装で来ちゃったんだけど!」
そんな私に対し、湊は優しかった。
「初めまして、湊です。全然可愛いけど」
「可愛い」という言葉が脳内でこだまする。イケメンは性格もいい。
この日は連絡先を交換し、翌日私のほうからLINEを送ってみた。また同時にインスタも交換していたので、お互いのストーリーズに反応したり、DMを送り合ったりしていた。
そこから何も起こらずに終わっていたある日のこと。湊が、私の行きたかったお店の投稿をしていた。
― Mao:いいな〜!このお店、一度行ってみたくて。
― Minato:そうなの?じゃあ今度一緒に行こうよ。
こうして、広尾にある予約困難店『ボッテガ』でのデートが決定した。
「ここ来たかったの!湊くん誘ってくれてありがとう」
ずっと来たかった『ボッテガ』に来ることができて、おのずと気分が上がってしまう。
「真緒ちゃんも食べること好きだよね?いつもインスタで、いいお店行ってるな〜と思って見てるよ」
「たまたまね。食べること大好きだから♡こういういいお店に行くのも好きかな」
「食って人生が豊かになるよね」
湊とは、食の趣味が似ていた。美味しいお店の探求にも貪欲だったし、食に対するテンションが一緒というのはとてもポイントが高いと思う。
「湊くんグルメだから、また色々お店教えてほしいな〜」
SNSを見ている限り、湊のグルメ偏差値も相当高そうだ。
「もちろんだよ。むしろ真緒ちゃんも詳しそうだから、教えてほしいよ。これからいろんな店に一緒に行ければいいね」
― え。これって…「これからもデートしよう」っていう意味で合ってるのかな。
湊の言葉をどう捉えるべきかわからなかったけれど、とりあえずマイナスな意味でないことだけは確かだった。
「真緒ちゃんは食事だと何が好きなの?」
「そうだなぁ。何でも好きだけど…」
「じゃあ今度、鮨行かない?好きな店があってさ」
「行きたい!!」
そしてこの言葉を湊はちゃんと守ってくれて、ここから湊とは何度が食事へ行けることになった。
Q2:男が三度目のデートで感じた、女に対する印象の変化は?
二度目のデートは数年先まで予約が埋まっているお鮨屋さんへ行き、迎えた三度目のデート。
今回も私の行きたかった予約困難店だ。超高級な懐石料理のお店で、私は数日前からかなり楽しみにしていた。
「真緒ちゃんが今日空いていてよかった〜」
こんないいお店に連れてきてもらって感謝するのは私のほうなのに、お店に着くとむしろ湊のほうが喜んでくれている。
「こちらこそ。誘ってくれてありがとう!」
「真緒ちゃん、何飲む?」
「最初はシャンパンがいいな。でも湊くんも飲むよね?だったらボトルにする?」
「そうだね。真緒ちゃんも結構飲むしね」
こうして私たちは美味しい和食を食べながら、シャンパンを飲む。
「真緒ちゃんって…いつも良い香りがするよね?」
「そう?でも香水とかはつけてないよ」
今日は和食のカウンター席なので、香水はつけていない。ふんわりとボディクリームの香りを忍ばせてきたくらいだ。
こういう気遣いができることこそ、いい女の証だとわかっている。
「あ〜幸せ…♡」
「真緒ちゃん幸せそうな顔してるね…って、真緒ちゃんナプキンが落ちてるかも」
今日は合皮レザー素材のスカートだったので、膝の上のナプキンがいつのまにか滑って落ちてしまっていたようだ。
でも、ここで拾ってはいけない。
落ちたナプキンを自分では拾うことは、完全なるマナー違反。育ちが良いと思われたいし、私はちゃんと“マナーを知っている”ことをアピールする。
「本当だ…。でも店員が拾ってくれるから大丈夫」
「そっか」
でもしばらく誰も気がついてくれず、私は目力で訴える。するとようやく気がついてくれて、新しい物を持ってきてくれた。
「全然気がついてくれないから困っちゃうね」
「でもみんな忙しそうだから、仕方ないよ…って、もう真緒ちゃんもシャンパン空いちゃったね。次は何が飲みたい?」
「うーん。白のモンラッシェとかどう?」
「さすが、わかってるね。OK」
こうしてこの日も、私たちはシャンパン1本に白ワイン1本を空けた。
「真緒ちゃんってかなりお酒強いよね」
「そうかな。湊くんも強くない?」
「お酒好きだからね〜。一緒に飲めるのっていいよね」
そんな話をしながら夜は更けていく。
「湊くんはどういう女性が好きなの?」
「僕は品があって優しい人かな。友人とか職場の人に紹介しても恥ずかしくないとか。あとはどちらかと言うと、一緒に飲める人のほうがいいな」
つい数分前に「一緒に飲めるのいいな」と言われたばかり。食事の作法もわきまえているし、一緒に連れて歩いても恥ずかしくはないと思う。
そもそも、何の気持ちもない女性をここまで毎回予約困難店に連れて行くだろうか。しかも毎回支払いは全部湊だ。
多少の恋心か下心…もしくは何かしらのメリットがないと、ここまで誘ってくれる理由はないだろう。
「湊くんって、誰かと付き合う気はあるの?」
「うん、あるよ」
「だったら私は?」
冗談っぽく聞いてみたものの、うまくはぐらかされてしまった。
「真緒ちゃんには、僕よりもっといい人がいると思う」
― 特に変なことはしていないはずなんだけど…?
結局この後湊とは、何もなく自然に終わってしまった。果たして、湊は何を考えていたのだろうか…?
▶前回:「このあと、家に行っちゃう…?」デートで、女性の家近くのエリアを設定する男の本当の目的は…
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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男が予約困難店へ女を連れて行った理由は?