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ボルドーのブドウを根こそぎにしなければならない理由 フランスワインの危機

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 切っても切れない関係にあるフランスとワイン。ところが、そのフランスのワイン製造業は今かつてないほどの危機に面している。というのも、現在国内で3億リットルのワインが余剰分となっているのだ。過剰なワイン生産を調整するには、ブドウの木を20~30%根こそぎにする必要があるという見積もりすら出されている。この危機の理由は何か? 対策法はあるのか?

◆売れ残りの理由
 ワイン生産量が過剰となっている理由の一つは、輸出の滞りだ。フランスワインの一番の輸入国であるアメリカでは、トランプ大統領(当時)が2019年10月に25%の関税導入を決めたことから、ほぼ15ヶ月間市場が閉じた状態になってしまった。

 フランスワイン輸入額第2位の中国では、2018年にオーストラリアと結んだ貿易協定が理由で、オーストラリアワインの輸入が盛んになった。そのため、フランスから中国へのワイン輸出は急激に減少。その後中国とオーストラリアの関係は2020年に悪化し、中国はオーストラリアワインに200%の関税を導入したが、フランスワインにとってチャンスとなるべきこの年、新型コロナウイルスによるパンデミックが発生し、中国市場は長く閉鎖されてしまった。

◆ワインを飲まなくなったフランス人
 一方フランス国内では、ワインの消費量が減少の一途をたどっている。1960年には1人あたりの1年のワイン消費量が平均120リットルだったのに対し、2020年には40リットル強まで落ち込んでいる(フランス・アンフォ、1/4)。

 特に消費量の減少が目立つのは赤ワインで、過去10年で30%減少している(フランス・アンフォ、2/13)。産地ごとに見ると、ボルドーが35%、コート・デュ・ローヌが31%、ペイドックのIGPワインが29%と、2016年以来、消費量の減少が加速している(20minutes紙、2/21)。

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 フランス人のワイン離れの根底にあるのは、家庭の食生活の変化だ。ワインは基本的に食事と合わせて飲むものだが、選ぶには最低限のコツがある。特にワインのなかでも赤ワインがそうだ。一人で気軽に飲めるビールと比べると、その違いが際立つ。離婚や非婚で一人親家庭が増えたし、二人親家庭であっても共働きで忙しいため、家族そろって時間をかけて食事をとる機会はめっきり減った。それは、若者がワインに親しむ機会も減ったことを意味する。これを裏付けるように、赤と比べて比較的気軽に飲めるロゼや白は消費量にそれほど変化がない。

◆最初に打撃を受けたボルドー地方
 ワイン産地の一つ南西部のボルドーにはブドウ園が11万ヘクタールあり、製造ワインの85%が赤ワインだ。そのため、ボルドーは最初に余剰ワイン問題の打撃を被ることになった。

 ボルドーワイン業者委員会のファルジュ副会長の見積もりによれば、ボルドーにある約5000のワイナリーのうち、700~1200社が苦境に陥っており、300社が閉業を希望しているという(20minutes紙)。ロシアのウクライナ攻撃などを背景に現在進行形で進むインフレも影響している。

◆ワインを蒸留し、ブドウの木を抜く
 このワイン生産者の窮状を打開するため、フェノー農業・食料主権大臣は2月6日、1億6000万ユーロのワイン蒸留キャンペーンを発表した。これは余剰ワインを蒸留して、バイオエタノールや、香水に使うアルコールに変化させるというものだ。パンデミックが理由で世界中のバーやレストランが閉鎖された時にも、同様のキャンペーンが行われ、蒸留されたフランスワインはアルコールジェルの原料に用いられた。(農業情報サイト・プランシャン、2/7)

 だが、ワイン業者らは、ワイン蒸留キャンペーンだけでは不十分だと考え、ブドウの木の根こそぎキャンペーンへの国の援助を求めて運動してきた。手入されなくなったブドウの木は、フラヴサンス・ドレ病蔓延の原因になりかねないためだ。これを受け、フェノー大臣は3月1日、ブドウの木を抜くために数千万ユーロの援助を行うと発表した。(20minutes紙、3/1)

 ファルジュ副会長によれば、11万ヘクタールのボルドーのブドウ園のうち、20~30%を根こそぎにするべきだという意見もあるという。だが、そこまで思い切るのは容易ではないため、ファルジュ氏はとりあえず10%にあたる約1万ヘクタールを対象にしたいと考えている。(20minutes紙、2/21)

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