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交際1年の記念日ディナー。プロポーズを期待していたが、彼の口から出たのは意外な言葉で…

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交際1年の記念日ディナー。プロポーズを期待していたが、彼の口から出たのは意外な言葉で…

東京都内には、“お嬢様女子校”と呼ばれる学校がいくつもある。

華やかなイメージとは裏腹に、女子校育ちの女たちは、男性の目を気にせず、のびのびと独自の個性を伸ばす。

それと引き換えに大人になるまで経験できなかったのは、異性との交流だ。

社会に出てから、異性との交流に戸惑う女子は多い。

恋愛に不器用な“遅咲きの彼女たち”が手に入れる幸せは、どんな形?

▶前回:「年収800万以上で、早慶以上」を条件に婚活する32歳女。しかし、厳しい現実に直面し…



親の顔色をうかがって生きてきたキャリア女子:夏帆【前編】


「夏帆、この1年一緒にいてくれて、本当にありがとう」

「こちらこそ。コウキと一緒にいられて幸せだよ」

金曜日。交際1年記念として、広尾の『K+(カゲロウプリュス)』に、彼氏のコウキと来ていた。

全メニューがプリフィックスで、どれにしようかだなんて相談しながら決める時間もコウキとなら楽しい。

2歳下のコウキは高校卒業後専門学校に入学し、現在は音楽活動をしている。自ら表舞台に立つこともあれば、楽曲提供も行い、収入はムラがあって、多いときは月に300万ほどあるが、全然ないときもある。

それに、若くて才能がある新人も次々出てくるので、いつまでこの仕事を続けていけるかの保証もない。

コウキは私を愛してくれる一方「夏帆を見ているとコンプレックスを感じることもある」と言う。

なぜなら私は、いわゆる“履歴書”に書くスペックが満点だからだ。

私はお嬢様学校として有名な豊女に小学校から高校まで通い、大学は外部受験をし、現役で慶應に入学。

新卒で大手広告代理店に就職し、現在はプランナーとして働き、年収は1,000万円ほど。

すごく豊かな生活ができているだなんて自覚はないが、欲しいものを自由に買えるくらいの余裕はある。

コウキと出会うまでは“育ちがよくて、高学歴で大手企業に勤めていることが恋人の条件”だなんて言っていたが、彼は全く違うタイプだ。

学歴もなければ、決して育ちがいいわけではない

でも、幼い頃から抱いていた音楽家という夢を、困難にも屈せず叶えた人だ。

会社員になる道しかないと当たり前に思い込み、ありきたりな人生を歩んできた私とは違う生き方をしているコウキを、私は心から尊敬している。


「そろそろふたりの家を探して、同棲することも考えたいね」

乾杯をしたあと、コウキが切り出した。

今は、コウキの住んでいる西新宿のタワマンに週の半分ほど私が訪れている。

1LDKのコウキの部屋は、十分な広さだが、彼の家に居座っているというちょっとした居心地の悪さがあるのも事実だ。

「そうよね…そろそろ考えないと…」

コウキがどこまで私との結婚を意識しているのかはわからないが、同棲するということは、結婚という次のステップにきっと近づくだろう。

私が一人暮らしをしている新宿御苑のマンションの家賃がもったいないという気持ちもある。



実はまだ両親に彼の話をしていない。反対されると目に見えているからだ。

これまで彼氏ができるとすぐに両親に話してきた。ただ、その度に苦い思いをする。

― これまでMARCHでも学歴が気になるとか、メガベンチャーでも不安定とか言われたのよね…肩書じゃないところにこそ、大事なことがあると思うのに…。

ひとり娘ということもあり、両親から私に向けられる期待はとてつもなく大きい。

進学、就職にもかなり口を出された。

9割がそのままエスカレーターで大学まで進学するというのに、私は外部受験を選んだ。

受験を選んだ同級生たちの多くは、附属大学に希望する学部がないという理由だったが、私は特に学びたいことがあったわけではない。

幼い頃から大学は名門を出た方がいいと両親に言われ続け、それが自分自身の意志なのか曖昧なまま、大学は外部受験をするのだと、知らず知らずのうちに思うようになっていた。

就職も、大手広告代理店と、今勢いのあるメガベンチャーから内定をもらったが、両親の意向を反映して大手広告代理店に入社した。

最終的には自分の意志ではあるし、これまでの決断を間違えたとも思っていない。

それでも、私の大きな決断にはいつも両親の意向が伴っている。強要されたことはないが、私自身も両親の期待や要望に応えたいという思いもあった。

そうやってずっと生きてきた私は、両親の意見がないと決断ができない大人になってしまったという自覚もある。

結婚相手についても、きっと要望があるだろう。

― 大学にも行かず不安定な職に就いているコウキのことを悪く言われるのも嫌だし、ずっと切り出せなかったけど、同棲することも視野に入れてそろそろ話すべきよね…。

「そろそろ帰ろうか、タクシーを呼んでもらおう」

「……もう、帰るの?」

今日はとても楽しかった。



― プロポーズはなしか…。

高級店で1年記念ディナー。「それって、絶好のプロポーズのタイミング」と私は、勝手に盛り上がってきた。

― 私も、ちゃんと両親に話して、きちんとけじめをつけないと、彼もその気にならないよね…。


両親にコウキのことを報告すると・・・


翌日の土曜日。

コウキがライブイベントの仕事で一緒に過ごせないため、私は実家に遊びに行くことにした。

二子玉川にある実家には、月1回以上のペースで帰っている。強要されているわけではなく、家族に会いたいという自分自身の意志だ。

それだけの頻度で帰っていることを周りに話すと驚かれるが、ひとり娘の私にとって、両親の存在はずっと気にかかるものだ。

『母:今日は何時に帰る?駅までお父さんが車で迎えに行くから、時間決まったら連絡して!』

過保護だなと思いつつも、17時に駅に着く予定だと返信した。





ボトルワインと、母の気合の入った洋食を味わいながら、コウキのことを話すタイミングをうかがう。

「夏帆ももう32歳ね…いつまでこんな頻繁に顔を出してくれるのかしら」

ちょうどいい母の言葉に、ずっと胸に留まっていた言葉を切り出す。

「あのね、ずっと話してなかったんだけど、実は彼氏ができたの」

「あら!なんで言ってくれなかったの?実家に帰ってくる頻度が減ったから、そんな気もしたんだけど…」

母が驚くように声を上げる。

「どんな人?」

父の質問に、なんと答えるか悩む。

「音楽関係の仕事をしていて…この人なんだけど…」

スマホでコウキの名前を検索して、顔写真やプロフィールの載った画面を見せる。細かい学歴などは載っていないが、父の質問に答えるだけの情報はあるだろう。

覗き込んで食い入るように見る両親の姿は、品定めをしているようで、あまり気分がよくなかった。

「そうなのね、彼氏ができてよかったじゃない。安心した」

反論されると思っていたのに、呆気ない母の返答に拍子抜けだ。

少し空気が重いような気もしたが、まずは認めてくれたことに安心した。



翌日、1階のリビングにおりると、突然厳しい声色で母が切り出す。

「昨日の彼の件だけど、反対よ」

「え、どうして…?」

「あの後ネットで彼のことを調べてみたんだけど、高卒で聞いたこともない専門学校を出ているのね。

両親は離婚しているみたいだし、妹さんは連れ子なのかしら?そんな人と結婚するなんて、絶対ダメよ」

母が調べた情報には真実も嘘もあった。

「どうして会ったこともないのに、勝手にネットで調べた、誰が書いたかもわらかない情報を鵜呑みにして判断するの…?」

「夏帆だって言ってたじゃない。早慶以上の大手企業に勤めている人がいいって。この人はきっと、夏帆に釣り合わない」

私の言葉を耳にも入れず、断固反対する母に対し、何も言わない父は母に同意しているようだった。

「会ってから反対するならまだ理解できるけど…。

私は彼の生き方を尊敬しているし、そんな表面上の情報で彼のすべてを理解したようなこと言わないで」

愛するコウキを否定されたことで、私自身も否定されたような気がして、思わず声を荒らげる。

「夏帆のためを思って言っているの。彼とは釣り合わないから、きっと夏帆がいつかつらい思いをする。そんな苦しみを避けるために、お母さんは言っているのよ」

― どうせお母さんが、周りの人たちに自慢できるような結婚相手であってほしいってだけじゃない…!私のためだなんて建前を言ってるだけ…。

怒りと悲しみと、両親が認めないコウキとはもう一緒にいられないかもしれないという絶望で、両親の前だということも忘れて、涙が溢れ出た。

「ひとりになりたいから、帰る」

足早に、どこに帰ろうかも決めずに駅に向かう。



「親にコウキとのこと話したら、反対されちゃった…」

震える声のまま、コウキに電話をかける。

「夏帆のご両親に認められるような僕じゃなくてごめんね。とりあえず帰っておいで」

なにも考えずに電話ですべてを伝えてしまったというのに、彼は優しい言葉を投げかけ、さらには謝っていた。そのことに、また胸が締め付けられた。

すべてを正直にコウキに伝えたことが、彼をどれだか苦しめていたか。私はまだ自分の苦しさで精いっぱいで、全く気づいていなかった。


▶前回:「年収800万以上で、早慶以上」を条件に婚活する32歳女。しかし、厳しい現実に直面し…

▶1話目はこちら:「一生独身かもしれない…」真剣に婚活を始めた32歳女が悟った真実

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両親と折り合いが付かないまま、今度は職場でコネ入社美人部下との衝突があり…?


 
   

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