小松菜奈 | 現場で泣いたとき、役所広司さんに言われたこと
小松菜奈 | 現場で泣いたとき、役所広司さんに言われたこと
スクリーンデビュー作である中島哲也監督の『渇き。』で、ヒロインを務めた小松菜奈さん。役所広司さん演じる「ロクデナシの父親」をはじめ、その美貌としたたかさで周囲の人を翻弄する女子高生役・加奈子を演じています。演技指導が厳しいと評判の中島哲也監督との出会い、そして撮影現場での出来事を聞きました。
小松菜奈
中島監督は人の魅力を引き出す名人

――中島哲也監督は、「新人女優・小松菜奈さんとの劇的な出会いが、僕にこの物語の映画化を決意させました」と発言していらっしゃるそうですね。

小松菜奈 (以下、小松) そうみたいですね! そういう言葉を監督は普段は言ってくれないし、全然そんな様子がなかったので、監督のインタビューを読んで逆に驚きました。「あ、そんな風に思っててくれていたんだな」って、ちょっと照れくさかったです。

――直接言われたことはなかったんですね。

小松オーディションのときに、私を気に入ってくださったそうなのですが、そのときも、「モデルをやってるそうですが、仕事は楽しい?」とかそんな話ばかりしていましたから。

小松菜奈

――中島監督の演技指導はどうでしたか?

小松その人が持っている魅力を引き出すのがすごくうまい方だな、と思いました。私が自分でもいままで知らなかったようないろんな表情や雰囲気や動きとかも、引き出してくださったと思います。

――自分でも気付いていなかったような一面ということですか?

小松たとえば普段の自分だったら恥ずかしくてできないような表情とか動きも、監督に言われると「もう恥ずかしいとかいいや」って、割と素直に出せちゃうんですよね。あと、こちらが緊張しているとかも監督はすべてお見通しらしくて、「いま、緊張してるでしょ!」と声をかけてくださいました。

――「演技指導が厳しい」と有名な中島監督の映画に出るということで、緊張はしませんでしたか?

小松演じる前は「撮影が大変そうだな」と思いました。あの中島監督だし、私はあまり演技の経験もないので「これは多分、撮影中にすごく怒られるんじゃないかな」と。
 だから、撮影前には「なにがあってもがんばろう!」と覚悟を決めていたんですけど、現場に入ったら監督はすごく優しい方だったんで、驚きました。まぁ、もちろん言葉はキツい方なので「下手くそ!」とかしょっちゅう言われていましたけど(笑)。

――厳しい言葉にショックを受けたりはしなかった?

小松でも、良い演技をしたらその分ちゃんと褒めてくださるので。ダメ出しされたところは、素直に「あぁ、いまのはよくなかったんだろうな」と思えました。むしろメリハリがあってわかりやすかったですね。

――撮影現場では苦労することはありましたか?

小松その場その場で「こっちのほうがいいんじゃないか」と感覚的に演じていたので、OKをもらえないときは苦労しましたね! どう直したらいいか、具体的にわからないから。

――何度もNGがでたシーンは?

小松役所さん演じるお父さんとのハードなシーンです。後につながるすごく大切なシーンだったんですが、役所さんも本気で私に向かってくるので、本当に怖くて。そのときに加奈子がフッと笑うシーンがあるんですけど、その笑い方がどうしてもうまくいかなかったんです。監督に何度も「それは違う!」とダメ出しされました。

――なにがいけなかったんですかね。

小松うーん、なんだか意識して笑ってしまっていたんだと思うんですよね。中島監督は本当にすごくて、「今、意識して笑っているだろ!」とか「なにか考えているだろ!」とか、すぐにわかっちゃうんですよ。もう、すべてお見通しで。
 でも、あまりに何度もダメ出しが入ったので、「どうしたら私に加奈子が演じられるんだろう?」っていう感情がガーッとこみ上げてきて、思わず現場で泣いちゃいましたね。
でも、監督は優しくて、落ち込んでいる私をものすごくはげましてくれました。

――そのときはどうやって切り抜けたんですか?

小松役所さんが「もっと心に余裕を持って、加奈子っぽく自由に演じたらいいと思うよ」と言ってくださって、「あぁ、そうなんだな」と。役所さんに言われたら「もう加奈子になりきるしかない!」と気持ちがリセットされて、リラックスできたんです。そしたら、無事OKが出てホッとしました。

小松菜奈
映画が終わったとき、一番に感じたのは「さみしさ」

――映画を観る前と後では、かなり小松さんの印象が変わると思うんですが、映画を観た周囲の方の反応はどうでしたか?

小松そうですねぇ。「怖い」って言われるようになりました。

――「怖い」ですか?

小松私が演じた加奈子は、笑顔で優しい言葉をかけながら他人を翻弄するような役なんです。だから、私にもそういう一面があるんじゃないかと思う人が多いみたいで。普通に笑顔でいるときにも、「本当は加奈子みたいに、内心でいろんなこと考えているんでしょ」って言われたりしましたね。それだけ役にハマっていたってことなんでしょうか(笑)。

――ご自身では映画を撮り終わった後、気持ちの変化はありましたか?

(c)2014「渇き。」製作委員会
©2014「渇き。」製作委員会

小松うーん。自分の内面で変わったことは特になかったんですが、クランクアップした瞬間、「あぁ、これで『渇き。』が終わったんだな」とこれまで詰まっていたものがスーッと抜けた感じがしました。撮影期間は3ヶ月ぐらいだったんですが、初めての大役なのでものすごくプレッシャーを感じていて、ずっと緊張していたんです。

――じゃあ、解放感にあふれてた?

小松もちろんそれもあります。でも、撮影が終わったときに一番最初に感じたのは、「あぁ、もうみんなに会えないんだ」っていうさみしさですね。あれだけ毎日一緒にいたのに、もう同じチームで同じ現場で会うことってないんだなと思うと不思議な感覚で。その後に別の現場でスタッフさんに再会して、「あぁ、久しぶりだなぁ」「あの撮影は大変だったなぁ」って思い出したりします。
 だから、今回完成した映画を観ているときも、撮影時のことを思い出して泣きそうになりました(笑)。

――また加奈子のような周りの人を振り回す役をやってみたいと思いましたか?

小松やりたいです。初めての映画出演がこの役で、演技の経験もほとんどない状態だったので、もうちょっと経験を積んだ後に、こういう役をやったらどんな感じになるのかなとワクワクしますね。

執筆:藤村はるな、撮影:小島マサヒロ

(更新日:2016年1月10日)

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