
「大人のふりした”ちゃおっ子”でした」
自身の少女時代をそう表現するのは、女優の松岡茉優さん。子役からスタートし、映画やドラマなど数々の作品で主演を務めてきた実力派だ。少女マンガ雑誌「ちゃお」になぞらえて、「元気いっぱいガール」だったという。いまも明るい笑顔が魅力だが、その陰には子役時代の悔しい思いと、人との距離感を慎重に測る繊細な一面があった――。

「週に1回街の本屋さんに足を運んでもらおう」と、東京都書店商業組合が立ち上げたプロジェクト〈#木曜日は本曜日〉。毎週木曜日に著名人・インフルエンサー・作家が「人生を変えた本」を紹介する、〈東京○○書店〉が更新中だ。これまでに、上白石萌音さん、加藤シゲアキさん、本谷有希子さんらが登場した。
第18回の「店主」となった松岡さん。「苦渋の選択です」と選んだ10冊の中から、インタビューでは3冊を紹介した。
いいですか?ダメですか?ダメですか?どうですか?
1冊目は幼稚園のころから「なぜか大好き」で、繰り返し読んでもらっていたという『とにかくさけんでにげるんだ わるい人から身をまもる本』(ベティー・ボガホールド作、岩崎書店)。カナダの小学校で副読本として使われている絵本で、誘拐や性被害にあわないために、具体例を示してやさしく教えてくれる。

松岡さんはこの作品から、自分自身を大切にするための「人との距離感」を学んだという。
「(自分が)相手を傷つける相手にもなりうるし、傷つけられるかもしれない。だけど自分は自分だから、自分の感じたことを信じていいんだよって教えてくれた絵本で、本当に読めてよかったです」
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小学4、5年生のころにはもう恋愛もしていて、「ずいぶん早くに大人になったつもりだった子どもだった」松岡さん。「だから小学生の高学年に入った方とは、大人としてお付き合いしなくちゃなと思います」と言う。相手に対する距離感の測り方も、かなり慎重だ。
「仲良くなりたいって思っている人でも、相手方に迷惑じゃないかな、嫌じゃないかなっていうのはもう、ゆっくりつつく。いいですか?ダメですか?ダメですか?どうですか?って(笑)」
そんな松岡さんが「自分も知らずに誰かを傷つけているかもしれない」と再認識したというもう一つの作品が、益田ミリさんのマンガ『きみの隣りで』(幻冬舎)だ。シンプルな絵で1話2~3ページほどの短い話なのに「なんでこんなに泣けるんだ」と熱を込めて語る。
「私もそんなに強強(つよつよ)の人間ではないから、(誰かの言葉に)『わー傷ついた』とか『そんなこと言うんだ』とか『そんな目して言わなくてもいいじゃない』とかよく思うんですけど、それってこっちにも言えるよねって。(中略)被害者になりがちな自分を、ちょっとストップかけられる。私ももちろん、誰かを傷つけることはあるんだぞって」
そしてもう一冊、松岡さんが挙げたのが恩田陸さんの『ドミノ』(KADOKAWA)だ。作中に登場する子役の心情に「わかりみが深すぎる」と絶賛。自身が子役時代に経験した「悔しい悲しい情けない惨め」な思い出とは――?
本屋さんってすごい!
動画後半では、東京・北青山の山陽堂書店へ。実はしょっちゅう訪れているという松岡さん。お店の存在を知ったのは、今回選書した『こっちむいて! みいこ』(小学館)29巻に描かれていたことがきっかけだった。

児童書のコーナーで少女マンガ雑誌を見つけると大はしゃぎ。女子の間では「ちゃお派」「りぼん派」「なかよし派」があると言い、自分は「元気いっぱいガール」の「ちゃお派」だと明かす。松岡さんが分析する「りぼん派」「なかよし派」の特徴も、子どものころ夢中で読んでいた女子なら納得するに違いない。
その後も次々と好きな本のエピソードを紹介していく。文芸書のコーナーでは、学生時代に山田詠美さんを知るきっかけとなった作品に出合い直したり、主演映画『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)の原作を手に、作者の恩田陸さんが撮影現場に来てくれた「感動の日」のエピソードを披露したり。「こういうことがあるから本屋さんってすごい」と目を輝かせていた。
そんな松岡さんにとって「本屋」とは? 最後のオチにも注目だ。