
身に覚えのない自分の目撃情報。それは、姉、母を死に追いやられた妹による復讐の始まりだった。姉と母の自死という衝撃的な出来事をきっかけに復讐を企てる千春と、復讐の対象となるまゆ実、二人の視点によって描かれる復讐劇。第三のオンナとは、果たして誰なのか――謎が解き明かされる度、さらなる衝撃の展開に息をのむ珠玉のミステリー小説。※本記事は、椎名雅史氏の小説『第三のオンナ、』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
第三のオンナ、
まゆ実
わたしは店を出ると、近くの小さな公園を訪れた。亜矢にスマホを預け、写真を何枚か撮ってもらう。その中からお気に入りのものをひとつ選ぶと、写真や動画を簡単にシェアできるアプリ、スタスタグラムにアップした。次々と、いいね! がついていくと共に、「素敵」「かわいい」といった嬉しいコメントが続いていく。
「すごいね」
反応の速さとコメントの数に、亜矢が目を丸くしている。
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スタスタグラムをはじめたのは三年前。初めての投稿写真は化粧ポーチで、以後、週三ペースでアップしていった。お気に入りのバッグや洋服などのファッション、化粧品や香水といった美容関連のアイテムを。これどうかしら? と友達に話しかけるように気軽な感じで。
すると、少しずつファンができ、発信する魅力にハマッた。気分は売れっ子スタスタグラマー。スタスタグラムを通じて、数えるほどだが、アパレル会社のイベント企画やパーティーに招待されたこともある。自分で言うのもなんだが、美人に生まれてよかったと思う。もちろん人前では、自分から美人だなんておくびにも出さないけれど。
人生の追い風が吹いているかも。わたしはそう思わずにはいられなかった。
「昨日、ガーデンプレイスにいませんでした?」
わたしは更衣室でテニスウェアに着替えていると、サークルの後輩ミナが不意に聞いてきた。
「またぁ?」