
想像もしたくないけれど、もしも夫に先立たれてしまったら。そんな不安がよぎったことはないだろうか。日本国民の平均寿命は男性のほうが短いというのも、よく言われることだ。
相続専門の税理士として、夫が亡くなったときの妻の相続を数多くサポートしている島根猛さんは、「財産を残す側」の思いを大切にしつつも残された家族の生活や人生を第一に考えるべきだと言う。
今回は、島根さんの著書『「もしも夫が亡くなったらどうしよう?」と思ったら読む本 夫婦で豊かな老後を送るために知っておきたい相続のこと』(クロスメディア・パブリッシング)から、もしものときに備えて知っておきたいポイントを全3回にわたって見ていこう。
第1回は、第2章「トラブルの実例に学ぶ 残された妻や家族を困惑させた5つの相続の話」から、夫の財産を相続した妻が亡くなり、その財産を子どもが引き継ぐ「二次相続」の考え方について、実際の事例と共に紹介する。

~以下、本文より~
「妻目線」を優先して
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事例1 「残された妻と子どもたちの相続」のお話
夫 浩二さん(享年62歳)会社員
妻 春子さん(59歳)専業主婦
長女(30歳)
長男(28歳)
「なんだか胃が痛むんだよな……」
ある日の夕食時に、春子さん(59歳)は夫の浩二さん(62歳)から打ち明けられました。
「病院に行って来たら?」
「そうだな」
このときは、ふたりともさほど深刻と捉えていませんでした。その数日後に浩二さんが病院を受診したのですが、検査を受けてみたところ、スキルス胃がんが見つかったのです。スキルス胃がんは初期症状が現れにくく、進行が速いのが特徴です。浩二さんは既にステージ4で、他の臓器への転移が見られるという状態でした。そして残念ながら、半年後に亡くなってしまったのです。
夫の突然の死に、春子さんはなかなか心の整理をすることができませんでした。当時の浩二さんは定年前で現役のサラリーマンだったということもあり、まさかこんなに早く夫を失うなんて想像すらしていなかったのです。