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芸能プロデューサーדテレビ画面に映るもの”|ダメ業界人の戯れ言#7

ホンシェルジュ

ドラマや映画などの制作に長年携わってきた読書家プロデューサー・藤原 努による、本を主軸としたカルチャーコラム。幅広い読書遍歴を樹形図のように辿って本を紹介しながら、自身の思うところを綴ります。

#7では、自身が11年以上担当するテレビ番組『Qさま!!』やドラマ『杉咲花の撮休』の、ここだけの制作秘話がこぼれます。

テレビ画面に映るもの 

『君のクイズ』と言う今結構売れてる小説を読みました。

昔だったら全く興味のわかなかった題材なのですが、何しろ僕は会社のシフトもあって『Qさま!!』というクイズ番組の担当プロデューサーを震災前から一応11年以上やっておりまして、知識を問われるクイズが多いこの番組で僕がやっていることと言えば、司会のさまぁ~ずの二人と楽屋で雑談するのと、放送前に番組に問題がないか危機管理のプレビューをすることぐらいなのですが、おかげでこの番組の出題傾向とか、人(回答者)はどういうことでたとえば勘違いしてミスってしまうのか、とか、そういうことが体感として分るようになりました。これ、問題を作るとか制作の根幹に携わっているとむしろ見えなくなるかもしれない客観性もこの番組については維持できている、という変な自負があります。

そんな中、『君のクイズ』は、クイズ王みたいな人たちが競う中、いわゆる早押しの設問で、一対一の一騎打ちになった時、優勝することになる人間のほうがラストの設問で、一つも問題が読まれていないうちに正答を出して勝ち、負けたほうがこれはやらせだったのではないかと疑うところから始まります。

著者小川 哲 出版日

これ、クイズ番組を見ない人には何のこっちゃかもしれないので補足すると、早押しクイズは、設問の途中でも答えが分ったらボタンを押して正答できたらその人の勝ちと言うもので、出題文の中で素人にはおよそ想像のつかない段階でその設問が何を問うているかを予測し、その正答を出す、まあそれだからこそ「クイズ王」などと言う非公式のステータスを持つ人間が出てくるわけです。

しかしそれでも出題文が何も読まれていない段階で、正答を出す、などと言うのは超能力でもなければ無理なんじゃないかと思われそうですが、しかし、そこにはクイズ番組が持つ言わば“文脈”のようなものがあって、それが少しずつ詳らかになっていく、そう言う、クイズ番組に割と長期間いっちょかみしている身からしても、かなりワクワクする小説でした。

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で、ネタバレはできないのですが、この小説を読んで、僕は自分が担当している『Qさま!!』という番組を知らぬ間に検証していました。

この番組、常連回答者という人が何人かいて、石原良純さん、芸人のロザン宇治原さん、メイプル超合金のカズレーザーさん、伊集院光さんなどがそうなのですが、彼らは初めてこの番組に出る人などと比べて圧倒的に強いのです。これ、先ほど書いた番組の“文脈”を彼らが体感として知っているのが大きいのではないかと考えられます。たとえば出題する側に立って考えるとこの段階でこんな簡単な問題を出すわけがない、これは何かある、と類推するというようなことです。

『君のクイズ』の中で、日本で一番低い山を問う設問が出て、それを「天保山(大阪)」と答えてそれが誤答になる場面がありますが、これは東日本大震災後、宮城県の地盤沈下があって、今では宮城県内にある「日和山」と言うのが一番低くなっていてそれが正答になっています。つまり時事的な細かい事実を把握していないと答えられないわけですが、この前『Qさま!!』でも日本で一番面積の狭い都道府県を問う設問があり、これ少し知っている人なら「大阪府」と答えがちなのですが、今は関空による埋め立てなどもあって大阪の面積が広くなり、正答は「香川県」になるのです。

まあこれは番組常連の回答者からすれば、引っかけ問題だと気づくということですね。

で『Qさま!!』の話に戻ると、先ほどの常連の中でも、カズレーザーさんがバカみたいに強いのです。彼は元々知識量もすごいと思いますが、出題者の意図などを読む「クイズ脳」においても飛び抜けて優れているのは間違いありません。

しかしそんな人にも得意ではないジャンルというのは存在して以前はそこがネックになりそうな時もあったのですが、最近はそれすらも正答を出せることが多くなっています。たぶん番組の文脈が時間をかけて彼の血肉になりつつあるのだと思います。

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