
「夢」は時に美しく、時に残酷で、人を幸せにすることもあれば、傷つけることもある。1月27日にTwitter上で公開されたオリジナル漫画『或る作家の話』は、売れない作家と画家になりたい少女を中心に、そんな「夢」と「創作の本質」について考えさせられる作品だ。
(参考:漫画『僕はマンガが大好きさ』を読む)
児童小説作家を目指すチャールズは出版社に自身の本を売り込むも、いつものように「説教臭くてつまらん」と突き返される。結果が全く出ないため、半ば強制的に実家に帰ってきたチャールズは、そこで姪のビアトリクスと出会う。最初は自由な言動を繰り返すビアトリクスを面倒に思っていたが、絵が大好きな彼女と交流を重ねていくうちに心境の変化が生まれて――。
「アフタヌーン四季賞2023年冬四季大賞」を受賞した本作を描いたのは、今後に期待がかかるクリエイターの秋晴さん(@puooooooooooo)。ドラマとしての質が高い本作を制作した経緯など、話を聞いた。(望月悠木)
■作者自身の物語
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――『或る作家の話』制作の背景を教えてください。
秋晴:もともと幼少期から漫画や絵を描くことが好きだったのですが、「子供らしい絵ではない」「芸術的ではない」と周囲の大人からは不評でした。ただ、高校生の時に課題で絵本を描いた際、初めて大人達に絵を褒められ、「これなら認めてもらえるんだ!」と思って絵本作家を目指すようになりました。
――秋晴さん自身の物語でもあるのですね。
秋晴:そうかもしれません。その後、美術系の大学に進み絵本を描いていたのですが、絵はどうしても絵本というよりは漫画っぽくなってしまい、話も説教くさくなってしまうというか、我ながらあまり面白くなりませんでした。そんな時、子どもがいる同学生の制作した絵本を見て感嘆しました。文は言葉を羅列するだけではなくリズム感があり、子どもが驚くような仕掛けがあり、絵は大胆で楽しい。その時、「この人はちゃんと子どもに向けて描いているから面白いんだ」「本当に絵本を描くのが好きで描いているから面白いのだ」と思いました。
■キッカケは『不思議の国アリス』
――アーネストに指摘されたチャールズのような気持ちになったのですね。