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50代、老後の住まいはどう探す? 2人の女性の体験談

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ひとり老後、賢く楽しむ(大和書房)<amazonで購入>

 老後の大きな心配事の一つは、住まい。現在61歳のエッセイスト・岸本葉子さんは、30代で購入した家の思わぬ不便や、父親の介護経験などから、住まいの計画を見直すようになった。

 終の棲家と決めても、年齢を重ねてみると「こんなはずじゃなかった!」ということがあるかも……。同世代や人生の先輩は、どんな計画をしているのだろうか? 岸本さんは50代から90代までの幅広い世代の話を聞き、著書『ひとり老後、賢く楽しむ』(大和書房)にまとめた。今回はその中から、2人の女性のエピソードをご紹介しよう。

ローンは大変でも「買ってよかった」

 71歳の女性は、59歳のときに買った家にひとりで暮らしている。賃貸マンションで一緒に住んでいた娘を巣立たせたあと、リフォームして居心地よくしようと思っていたが、「自分の家じゃないから、せっかく居心地よくしても、ある日突然大家さんの都合で出ていかなければならなくなるかもしれない」と気づいた。そこで、頭金400万円を払って家を購入。今もローンがあり大変だが、「買ってよかった」とのことだ。

 定年後は家にいる時間が長くなる。それまでに家を整えておいたのは「大正解」だったという。

 自分の家を買ってはじめてインテリアにめざめた、好きなものがようやくわかった。自分の美意識にかなったものをそばに置く。家がすてきに思えると生活そのものが明るくなる。
「家は基地だ」「住まいの充実、これは大事よ」と言っていたのが印象的でした。

 反省点は、「現役のうちに繰り上げ返済をもっとしておけばよかった」ということ。フルタイムでなくなっても仕事はしているが、給料なしでローンを払うのは、想像していたよりもずっと大変なのだそうだ。

 でもそこは節約で乗り切る。むしろ家が充実しているからこそ節約ができる。そういう良き循環が、持ち家を構えることで生まれたそうです。

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 その女性にとって、暮らしに欠かせないのが商店街。「人と喋らないと頭が回らないタイプ」で、常に会話のある環境に身を置いていたいという。広告でよく見るような、定年後にのどかな地方に移住……というイメージは全くないそう。定年後の暮らしと一口に言っても、人によって理想はさまざまだ。

理想の戸建て「自分もやればできるかも」

 一方で50代の女性は、「海のそばの一戸建てに犬といっしょに住みたい」と、理想の家を探している最中だそう。今の借家も海に近くて条件がいいが、築50年なのが懸案だ。

 家族と話していると、年をとったらメンテナンスが楽なマンションがいいかもと揺らぐことも。でも、マンション住まいの人の話を聞くと周囲に気を遣わなくてはいけないようで、やっぱり戸建てがいい……とあれこれ考えているという。情報収集をする中で聞いたこんな話が、女性の背中を押している。

そんなにお金のあるはずのない知人が、海が見えるところに一戸建てを買った。死ぬ気で5年間探し続けたそうだと聞くと、「自分もやればできるんじゃないか」って。

 現在、すでに近所に気になっている家があるが、ローンを抑えるために頭金を貯めてから動き出そうと思っているという。でももし目標額に達しなかったら、マンションがいいと思うようになるかも……そんなふうに、日々試行錯誤している。

 71歳の女性と50代の女性は、理想の住まいは違えど、「住まいを充実させたいという強い思い」が共通していると岸本さんは書く。本書には他にも、郊外の賃貸に住み「最大の備えは仕事を続けること」と語る50代の男性や、自分の老いよりも「とにかく今は猫の看取りが最大の課題」という68歳の女性の話も。住まいや暮らしの価値観は、本当に人それぞれだ。

 私は、老後の心配として自分が簡単に指折り数えて挙げられることが、みんなに共通の心配ポイントだと思っていました。
 なので「海のそばで犬と」とか「猫の看取りが」とかと、思いもよらぬことを聞くと、内心「えっ、そこですか?!」と肩すかしを食うと同時に、救われる思いでした。特に年上のかたからのそういう話には励まされました。
 自分で想定した心配事に、いかにとらわれていたかに気づきました。

 心配事はいろいろあれど、まずは自分がどんな暮らしをしたいか、理想を思い描いてみるのがいいのかもしれない。

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