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「トレスポ」世代に刺さる胸アツの1本!映画『クリエイション・ストーリーズ』

キネマ旬報WEB

イギリス・ロンドンを拠点として、90年代を中心に数多くの超人気アーティストを輩出し、世界中に「ブリット・ポップ」の存在を知らしめた、伝説的な音楽レーベル創設者アラン・マッギー。彼の半生を綴ったドラマ『クリエイション・ストーリーズ ~世界の音楽シーンを塗り替えた男~』が、2月3日(金)にDVDでリリースされた(デジタル配信中)。

新しいロックの潮流を見出し、その波に「溺れかけた」男の破天荒な生き様

プライマル・スクリーム、ジーザス&メリーチェイン、ティーンエイジ・ファンクラブ、そしてオアシス…これらのバンド名を聞いて「!!!」と反応してしまう人なら、間違いなく90年代に一度は「ブリット・ポップ」の魅力にハマり、そして「クリエイション・レコーズ」というレーベルの存在を目にした記憶があるはずだ。

UKロック=スタイリッシュな衣装、洗練された楽曲という従来のイメージに背を向け、あくまで自然体のジャージ姿で「俺たちの演りたい音楽」を奏でたバンドのスタイルが、最高にクールに響いたあの時代。本作は、そんな新しいロックの潮流を見出し、その巨大な高波に呑まれ、そして文字通り「溺れかけた」男の、破天荒な生き様の軌跡だ。

スコットランドの片田舎で保守的な父親の下に育てられながら、ロックスターを目指してパンク全盛期の70年代にロンドンへ飛び出し、やがて自分たちが本当に「最高」と信じた音楽を届けるためのレーベルを創設した、アラン・マッギーという男。レーベル成功の影で財政面での破綻やアルコール&ドラッグの罠に嵌まり、仕事相手や友人とのトラブルにも明け暮れた彼が、何故イギリスのロック・シーンで今も語り継がれるほどの「大物」に君臨することが出来たのか。

『トレインスポッティング』製作メンバーが描く、伝説的レーベル誕生の裏側

本作の脚本を務めたのは、96年に世界中で大ブームを巻き起こした青春映画の傑作『トレインスポッティング』の原作者として知られる、アーヴィン・ウェルシュ。そして同作で主人公の気弱な親友・スパッドを演じたユエン・ブレムナーが、本作ではアイロニカルで破滅的でありながら常人には真似の出来ない「突進力」に溢れたアラン・マッギー役を怪演し、その圧倒的なパワーが全編で目を奪う。また製作総指揮には同作の監督であるダニー・ボイルも参加しており、正にマッギーが音楽界を席巻した頃と同時期に、映画でポップカルチャー史を塗り替えた「トレスポ」製作メンバーが「クリエイション・レコーズ」の歴史を紐解く映画を創り上げたという、90年代当時をリアルタイムで知る者には、正に堪らない組み合わせと言えるだろう。

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そして監督を務めたのが、「トレスポ」とほぼ同時期に作られた、ガイ・リッチー監督のデビュー作としても知られる英国産犯罪コメディ『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で主人公を演じていたニック・モランというのも、当時を知る世代には何気に熱い(彼は70年代パンクのムーブメントを盛り立てた伝説の仕掛け人、マルコム・マクラーレン役で出演もしている)。「カオスの極みだった当時のロンドンの空気を、映画の中で再現したかった」というモラン監督の狙い通り、凡百な実話ベースのドラマとは一線を画すマッギーの「ぶっ飛んだ人生」そのものの勢いで、笑いと狂騒に満ちた20数年間を一気に突っ走っていく。

音楽ファンの間で今も語り継がれている、マッギーと数々のバンドとの運命的な出逢い(プライマル・スクリームのボーカル、ボビー・ギレスピーとの学生時代からの交流、全くの無名バンドだったオアシスを地元で発見した日の奇跡的エピソードなど)が、「ウソでしょ…これって本当なの??」と思わず突っ込みたくなるような(もちろんこれらは本当の話)、軽妙なホラ話テイスト満載で描かれていく展開も、実に可笑しい。マッギー本人曰く「映画の一部は作り話も入ってるよ」とのことだが、観ていて誰もが身体を動かしたくなるライブハウスの空気感や、早朝パーティー帰りの仲間たちがカフェで踊り出す場面の楽しさなど、音楽が「全て」を忘れさせる瞬間の多幸感を味わった後では、果たしてどれが「真実」だったかなど、余計な勘繰りだろう。

熾烈な音楽業界をくぐり抜けた男が行き着く、壮大な「パーティー」の幕引き
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