
姿を消した熊岡愛瞳の親友、三輪葵を探し出すために、同じように友人が行方不明になったと話す上村と接触し、ともに事件の手掛かりを探ることに。そこで彼らは「カシマレイコ」の都市伝説を耳にする。この噂に何かを感じたはぐれ者の刑事・伏見は、犯人を見つけ出すべく都市伝説の謎を追う。※本記事は、白崎秀仁氏の小説『カシマレイコの噂』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。
2
愛瞳の家を出ると、二人は一度警察署に戻るために、車に戻った。
「なに不満そうな顔してんだ?」
谷山は、苦味が口いっぱいに広がったような顔をしながら、ハンドルを握っている。
「不満なんじゃありませんよ。呆れてるんです。あんなこと、確証があるわけでもないのに話すなんて……行儀よくしてくださいって言ったのに」
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ため息混じりに谷山が言う。伏見のそういう話には慣れっこである谷山だが、まさかあの場で話し出すとは思わなかったらしい。
「いや、行儀は悪くなかっただろ。まあ……確かに今のところそれだという証拠はない。けど、確証がまったくないってわけでもない。俺があの手の話をすると、大半の人間は否定するけど、俺もな、何でもかんでも“そっち”に結びつけてるわけじゃなく、それなりの根拠があって言ってるんだぞ?」
「それは分かっていますよ。でも、いきなりあれは……」
「遠まわしに言ったところで、伝わるような話じゃない。むしろ、もし相手が確証をもてない不思議な出来事を見たり聞いたりしていた場合、こっちから心を開くことで、この人なら聞いてくれるかもしれないと思って、話すかもしれないだろ?」
「そういうものですかね……」
「俺はそう思うよ」