――「書籍姫」の話も興味深かったです。
ぬじま:伝承として残っているのですが、実際に誰が「書籍姫」だったかは正式にはわからないんですよ。以前は四谷に墓があったのですが、今では忘れられかけている気がします。そこら辺の知識は編集者さん任せで……(笑)。
――また「日常が長編小説だ」というパンチラインが強烈でした。ページの最後のコマで「常/長/小」で韻を踏んでいて、まさにラップだなと。
ぬじま:確かに。言われて気付きました(笑)。奇跡のラッキーパンチですが、最後に心に残るセリフが来る作品は好きなので、そんな意識はあったのかもしれません。
董子のモデルは村上春樹さんの『スプートニクの恋人』に出てくる「すみれ」なんです。彼女は上手く話せず、脳内で小説を描きながら話すというキャラなのですが、中学生の僕に強烈な印象を残しました。文章に親しむ人の言語感覚って、脳内に原稿用紙を広げているんだろうなというイメージでキャラに投影させた感じです。
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――『怪異と乙女と神隠し』はアニメ化も決定しています。こちらについては?
ぬじま:自分の作品自体が万人に開けているものかはわからないので不安もありますが(笑)、テーマは多くの人に共感してもらえる部分が多いと思っています。不思議なものに遭遇した人たちが抱えている心の問題やコンプレックスは、特殊なものではないんですよ。「このキャラのスタンスはわかるな」と要所で引っかかる作品になるはずです。
――最後に今後の展望をお願いします。
ぬじま:個人的には本作が初めて描くストーリー漫画です。冒頭で「こういう物語ですよ」ということは明かしているので、ある程度の着地点はぼんやりとは見えているとはいえ、最後まで走り切れるように頑張れたら。あとは色々な角度から楽しんでもらいたいですね。